「原発ゼロの日本」へ政治転換
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からまもなく10年を迎えます。全労連、全日本民医連、新日本婦人の会などでつくる「原発をなくす全国連絡会」の岸本啓介さん(全日本民医連事務局長)に10年間の運動の成果と「原発ゼロの日本」実現への展望を聞きました。(内田達朗)
原発をなくす全国連絡会は、2011年3月の東京電力福島第1原発事故を受け同年12月、「原発をゼロにする」という一点で、労働組合、業者、農民、女性、医療などの団体が結成しました。
この10年間、一部の原発の再稼働はあったものの、全体としては原発推進の動きを押しとどめてきました。
私たちと首都圏反原発連合(反原連)、原水禁・平和フォーラムを中心とする「さようなら原発1000万人アクション」の3団体が、これまでの経過を乗り越え、力を合わせて共同を進めてきたことの成果です。
ゼロ基本法提出
とりわけ反原連が、毎週金曜日に首相官邸前抗議を続けてきたことは、各地の運動を励まし、その後、秘密保護法や戦争法などに反対して官邸前や国会前で声をあげる道を切り開きました。
市民と野党の共闘を前進させ、原発ゼロ基本法案を野党が共同提出するところまで実現しました。政治を変えれば、原発ゼロに大きく道を開ける展望が生まれています。
全国連絡会は、福島の現実から出発し、「ふくしま復興共同センター」と共同して、復興支援と一体で行動を続けてきました。
福島事故は終わっていません。廃炉は、加害者である東電が全責任を負うべきです。事故で発生した汚染水を海洋放出することは許されません。国の責任も免れません。世界の英知を集め、科学的な立場で進めるべきです。
事故の加害者である東京電力や国は、賠償を拒むなど被害者切り捨てを進めていますが、多くの人々が全面賠償を求めて立ち上がっています。国の責任を認めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の仙台高裁判決は、私たちに勇気を与えるものです。
自然エネへ転換
福島の現実を見ても、コストなどの面でも原発が成り立たないことは明白です。原発から撤退し、自然エネルギーへと転換することが世界の大きな潮流になっています。
ところが、菅政権は、あくまで原発に固執しています。電力会社を中心とする原発利益共同体の巻き返しも軽視できません。
原発をなくすたたかいは、企業の利潤を国民のいのちや生業より優先するこの国のあり方を変えるたたかいです。
今年は総選挙の年です。
全国連絡会は「原発ゼロ基本法の制定を求める請願署名」を軸に、「ふくしまの真の復興と原発ゼロをめざす大運動」に取り組んでいます。「原発再稼働反対」の共同を発展させながら、「原発ゼロの選択」を一大争点に押し上げ、「原発ゼロ」の政治転換を実現するために奮闘していく決意です。
(「しんぶん赤旗」2021年3月5日より転載)