複数回なりすまし
東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で起きたIDカードの不正使用に関して、IDを不正使用した東電社員は、繰り返しIDの所有者である別の社員の氏名を名乗るなどして、中央制御室に入室していたことが8日、原子力規制庁の説明で分かりました。
規制庁によると、柏崎刈羽原発の中央制御室勤務の東電社員が、昨年9月20日朝に個人ロッカーに保管してあったIDカードが見つからなかったことから、当日は勤務のなかった他の社員の無施錠のロッカーからIDを無断で持ち出しました。
同社員は、周辺防護区域の出入り口警備員に対して無断で持ち出したIDの持ち主の氏名を複数回名乗り通過していました。また、防護区域の出入り口では認証が複数回エラーとなり、警備員が登録顔写真との相違などに疑念を持ちながら、それ以上の身分確認をせず扉を開きました。
不正をおこなった社員は同日夜、自身のロッカーの奥に自分のIDが落ちていたのを発見しましたが、無断借用したIDを元に戻しました。しかし、翌日の朝、IDを無断借用された社員が防護区域に入ろうとしてエラーが発生したことで、前日の不正使用が発覚しました。
また、原子力規制委員会は同日の臨時会合(非公開)で、今回の不正使用の重要度について、安全確保の機能または性能への影響があるとして、4段階の評価で重大な方から3番目の「白」と暫定評価しました。「白」評価は、事業者の自主的措置ではなく、規制の関与の下での改善を図るべき水準とされ、追加の検査などがされます。同評価は、東電から15日までに回答がなかった場合は最終評価となります。
東京電力柏崎刈羽原発でのIDカード不正使用問題の経緯
2020年9月20日 柏崎刈羽原発の中央制御室で他人のIDカード使用で不正入室が発生
21日 東電社内の核セキュリティー部門が把握、原子力規制庁の核セキュリティー部門に報告
23日 原子力規制委員会が東電の保安規定変更案を了承、「適格性」を認める
12月21日 規制委と東電経営層の意見交換
2021年1月19日 規制庁が規制委の更田豊志委員長に報告
23日 東電が不正入室問題についてコメント
26日 規制庁が、委員全員が集まった臨時会議で報告
※東電、更田委員長の会見などを基に作成
ID不正利用 「全国の原発で点検が必要」 電力会社元幹部が指摘
東京電力柏崎刈羽原発のIDカード不正利用問題について原発業界に詳しい電力会社元幹部は「原子力規制委員会、東電の認識がまったく甘い。大問題だ」と指摘します。
この元幹部は、原発の中央制御室には運転員以外にも、メンテナンスの業者や見学者が頻繁に出入りする、と言います。IDカードによる認証だけではなく、暗証番号や静脈認証などの身体認証と組み合わせることが必要になってくる、と言います。
「制御室を破壊されたり、運転を乗っ取られたりすると大変なことになる。多くの原発で多重認証を導入していないはずだ。柏崎刈羽原発だけでなく、全国の原発の点検、改善が必要になる」
規制委に不正が伝わらぬまま柏崎刈羽原発の再稼働の「適格性」が認められた問題については、「規制委の認定はいいかげんだと言われても仕方ない。本当にまずいことをした」と批判します。
(「しんぶん赤旗」2021年2月9日より転載)