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福島第1汚染水海洋放出 タンク保管 復興・廃炉の前提・・福島大学准教授(食料資源経済学)林薫平さん

 漁業者を筆頭に、県内の農協、森林組合など多くの団体や自治体、つまり復興の主体である福島県民が「放出反対」の意思を続々と表明したのは、この半年間に現れた顕著なうねりで、私も驚くほどでした。とくに漁業者たちは、悲鳴を上げているのだと思っています。放出は「震災の第2波だ」「明白な加害行為だ」という強い声も出されましたが、まさにその通りです。

 政府・東京電力は、追加的な加害をもたらさないために本来粘り強く検討すべきタンク保管などの案については、敷地の調整が大変だ、漏れるリスクが高まるなどと言って早々と却下し、海洋放出の結論に強引に持っていきました。明白に被害を受ける地元団体が強硬に反対しているのに放出を強行し、その代償に賠償しますというのは「復興と廃炉の両立」という美名に隠れた露骨な国家による暴力そのものです。

福島第1原発の汚染水タンク群(本紙チャーター機から撮影)

 福島の漁業者は「海に漏れ続ける汚染水」に苦しんできました。対策が進み、2015年になって、やっとタンクに安全にためられるようになりました。タンク保管は、ようやくたどりついた「真の復興と廃炉の両立」のために不可欠な前提条件です。私は国策に反対する重圧の中で声を上げた福島県民の勇気と、そこまで追い込まれた悲痛な叫びを、全国民によく聞いてもらいたいと思います。

(「しんぶん赤旗」2020年10月17日より転載)