福島中央テレビが制作したドキュメント羽「海は死んだのか2~汚染水と福島の漁師たち」がきょう24日(日本系 深夜0・59)に放送されます。海から揚がったばかりの透明なシラスをとらえた短いシーンが、漁師たちの苦闘と願いを象徴して印象的です。(渡辺俊江)
ゆでたシラスを漁師たちが囲む場面が出てきます。食べると、「うまい。うまい。久々だ」。
売らないシラス
検査では放射性物質は検出限界値未満でした。でも、このシラスは市場には出されません。(2013年)7月に高濃度の汚染水が海に流れ出ていると、原子力規制委員会が発表。いわき産のシラスは「まだ消費者の理解は得られない」と漁師たちは判断しました。いわきは、福島県でただ一つ試験操業を見送りました。福島第1原発を間近に見ながら、いまも海からがれきを引き場げる作業が続きます。
番組を手がけたのは、福島中央テレビいわき支社の山中利之記者(41)です。「海に生業(なりわい)を持つ人たちが、折れそうになりながらも、いつかはまた漁に出ていきたいと願っています」
山中さんは「2極の中で翻弄(ほんろう)されている」と現実の厳しさを語りますが、番組から伝わってくるのは漁の再開に希望を託す人々の姿です。
「豊かな海の恵みを届けるのが漁師のみなさんの喜びです。『海の命をいただくことができなくなった』と言っていました」(山中さん)
一方で、番組は安倍首相の「(汚染水は)ブロックされている」という演説に厳しい目を向けます。東電の発表は首相演説と違っていること、さらに放射能の影響を研究する専門家の見解で「ブロック」がありえないことを示します。
水素爆発の映像・・見つめ続ける震災・原発
大震災の翌12日(2011年3月)に起きた原発1号機の水素爆発をとらえたのは、福島中央テレビの無人カメラでした。メディアの中でただ一つの映像でした。県
内では爆発から4分後に流し、避難を促すことにつながりました。
報道制作局の松川修三(おさみ)報道部長はいいます。ブロックされていると思っている福島県民はいません。批判しています。それを全国へ、できれば国外にも発信したいと。スタッフ各自、そういう意識で臨んでいます」
支局で二人三脚
同局はこれまで「ドキュメント」シリーズの中で、震災・原発を題材に9本を制作してきました。日々のニュース取材からドキュメンタリーの題材を見つけてきました。
山中さんは、2011年3月1日に支局に異動。大震災が発生したのは、その10日後でした。
「目の前で、津波で車が流されていきました」。以来、高橋一馬カメラマン(26)とともに取材を続けています。いわき支局は記者1人、カメラマンー人の体制。文字通り二人三脚です。
「毎日の1、2分のニュースも大切な仕事ですが、30分に凝縮した『ドキュメント』は現場の記者としては貴重です。地方の声を全国へ届けられる」と山中さん。
松川さんは、若い高橋カメラマンに「ずっと、いわきを見つめ続けてほしい」と期待をかけています。
3・11大震災シリーズ海は死んだのか2・・汚染水と福島の漁師たち
福島県いわき市の漁師にスポットをあてます。東京電力福島第1原発事故から2年8ヵ月が経過した今も、高濃度の汚染水が増え続けています。福島沖では食品の基準値を超える魚の数は減り、昨年から一部で試験操業をおこなってきました。安全が確認された魚は試験的に出荷するなど、福島の漁業は少しずつ再生の道を歩み始めていました。
そんなさなかに明らかになる汚染水の漏れ。いわきの漁師たちは、実害と「風評」の厳しい現実に直面します。その福島沖で、新たに再生可能エネルギーの実証研究プロジェクトが始まりました。
*「海は死んだのか福島の漁師 親と子の選択」(12年6月17日) 原発事故で生業を奪われた漁民の怒り、漁への思いを追いました。