関西電力の役員らが高浜原発のある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題は、発覚から1年が過ぎました。関電は第三者委員会を設けて調査報告書をまとめ、金品を受領した会長らを処分するなどしたものの、全容解明が尽くされていません。国が推進する原発という国策をめぐって、巨額の資金が動いた「闇」を曖昧にすることはできません。関電が隠ぺい姿勢を抜本的に改めることはもちろん、国は関電まかせでなく疑惑の全体像の解明に責任を果たすべきです。
暴露恐れた「暗部」とは
関電の会長や社長らが元助役・森山栄治氏(故人)から現金や商品券、スーツ仕立券などの金品を長期にわたり受け取っていたことは昨年9月末の報道で明らかになりました。関電は進んで事実を明かさず、昨年10月初めになって、隠していた内部調査結果を公表しました。そこでは、菓子の下に隠した金貨のやりとりなど異様な金品提供の様子や、元助役が国会議員や県議会に広い人脈があったことなども記されていました。元助役は、原発関連工事を請け負う高浜町内の建設会社から資金提供されていました。国民が払った電気料金を原資とする「原発マネー」が関電役員らに還流した疑惑として、国会でも取り上げられました。
今年3月、関電が設置した第三者委員会は、会長や社長ら75人が総額3億6000万円相当の金品を受領したと認定する報告書をまとめました。金品提供は1987年に始まったことや、元助役が高浜原発3、4号機の増設で根回しに動いていたことなども指摘しました。2011年の東京電力福島原発事故以降に金品の額が急増したとも記載しており、東日本大震災以降、停止していた原発を再稼働させる動きとの関連性もうかがわせます。金品を受け取った役員は原子力担当部門が中心です。
報告書は、元助役からの金品提供を関電側が断れなかった背景に、3、4号機増設時の「暗部の暴露」を恐れ、原発の安定的な稼働を重視する考えがあったことを挙げています。しかし、「暗部」の詳細な究明はされていません。内部調査で浮上した政治家との関係についても、全く手つかずです。
国が再稼働を進める中で増加した「安全対策工事」発注などをめぐり特定の業者に便宜がはかられた疑惑と背景に徹底的なメスを入れる時です。政府の責任が厳しく問われます。菅義偉政権にかわったからと言って、疑惑解明の課題から逃げることは許されません。
今月6日、関電は元助役からの金品提供で新たな事実が判明したとして金品受領者は83人に増加し、総額も3億7000万円相当に膨らんだと公表しました。問題が決着していないことを浮き彫りにしています。「うみは出し切った」(関電副社長)として調査を打ち切ろうというのは大問題です。
再稼働はきっぱり断念を
マネー還流疑惑に根本的な反省のない関電に原子力事業を担う資格はありません。原発を抱える自治体は関電への不信は募らせています。「信頼関係が損なわれている」(福井県)との声は消えず、再稼働に向けた同意も関電の思惑通りに進みません。国民の声に逆らって危険な原発の運転に固執するのではなく、再稼働をきっぱり断念することが求められます。
(「しんぶん赤旗」2020年10月10日より転載)