福島 元の暮らしを・・原発事故10年を前にシンポ
東京電力福島第1原発事故から来年10年になるのを前に、「福島原発事故から10年 これまでとこれから」をテーマにしたシンポジウムが10月3日、オンラインで行われました。第5回「原発と人権」全国研究・市民交流集会INふくしま実行委員会などが主催。
福島県の状況について同県いわき市在住の伊東達也原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員が報告。避難指示が出た12自治体のうち双葉町を除く11市町村で帰還宣言が出たものの、戻る人は少なく「戻った人も高齢者が多く、子どもが極端に少ない」と指摘。放射能への不安、働く場や交通機関、商店、医療など生活基盤が不十分なことが原因だと述べ、「多くの県民が求めているのは元の暮らしの復旧・復興だ」と強調しました。
事故の損害賠償などを求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟で仙台高裁が先月30日に国と東電の責任を断罪した判決について報告したのは、訴訟弁護団の南雲芳夫弁護士です。判決は「率直に喜べる中身だった」と述べ、国が敗訴した一審判決を覆そうとした国の主張・立証をことごとく否定しただけでなく、国の主張をなぜ採用できないかの理由を示した判決だったと指摘。「今後の判決への影響は極めて大きい」と強調しました。
シンポでは池内了・名古屋大学名誉教授が「核燃料サイクルと核エネルギーのあり方を考える」と題して講演。原発という技術は、大量の放射性廃棄物など未来の人たちへの「押しつけ」抜きに成立しないものだと述べました。
原発避難 合理性ある・・かながわ訴訟控訴審 原告側陳述
東京電力福島第1原発事故で、福島県から神奈川県に避難した住民らが国と東電を相手に損害賠償を求めている「福島原発かながわ訴訟」控訴審の第3回口頭弁論が2日、東京高裁(白井哲裁判長)で開かれました。富岡町から家族5人で避難している原告の男性と、原告弁護団が意見陳述しました。
男性は、事故前に単身赴任状態であったことを理由に、原子力損害賠償紛争解決センターの和解手続きで避難慰謝料が家族の半額しか認められませんでした。男性は「避難を強いられたことによる苦痛は他の家族と変わらない」「被害者が求める最低限の賠償についてはこれ以上争わずに、速やかに支払ってもらいたい」と求めました。
小賀坂徹弁護士は、広島の原爆被害者の「黒い雨訴訟」判決を紹介しながら、「放射線被ばくの影響は生命と身体に及ぶもので軽視されてはならない」と強調。内部被ばくの危険性にも触れ、「避難指示区域外の原告らが避難したことや、多数の原告が避難を継続していることには合理性が認められる」と主張しました。
(「しんぶん赤旗」2020年10月4日より転載)