「コンプライアンス(法令順守)上の問題はあるが違法ではない」。金沢国税局の税務調査を受けた関西電力の調査委員会は2018年9月、高浜町元助役の森山栄治氏(故人)からの約3億2千万円に上る金品受領とそれに絡む工事発注を「矮小(わいしょう)化」(第三者委員会)した。
違法性なしとの見解を受け、八木誠会長、岩根茂樹社長、森詳介相談役=いずれも当時=は問題を公表しなかった。
問題は翌19年9月に明るみに出た。しかし大きく報道されてもなお、関電のコンプライアンス意識の欠如は深刻だった。第三者委の報告によると、ある幹部は同委の調査に、森山氏の事業発注要求による関電の不利益はなく「要求にかかわらず同様の地元企業に発注したはずで、結果は変わらない」と言い切った。社会が騒ぐことが不当だという「関電の中でしか通用しない論理」(第三者委)が横行していた。
身内に甘く「内向きの企業体質がまん延していた」と、第三者委の委員長を務めた但木(ただき)敬一氏は14日の会見で関電を断罪した。何より優先すべきは原発の安定的な稼働と運営。そのためには森山氏との不適切な関係継続はやむを得ない―。こんな姿勢に「自分たちの行為が、社会、消費者からどう見られるかという意識が全くない」と但木氏。透明性は二の次、三の次となり結局、森山氏を囲んだ会食は09~17年の9年間だけでも421回、交際費は実に9千万円に上った。
森山氏から重箱とネクタイピンを贈られたという元高浜発電所長は福井新聞の取材に「本社が相談に応じてくれる雰囲気は全くなかった」と話した。個人対応が事実上の業務命令だったと振り返り、「監査役会も一体何をしていたのか」と憤る。
関電は現在、社外取締役の権限強化を目指している。不祥事の報告ルールも明確化し内部通報制度も見直す考えだ。元所長は「通報を受けたらしっかり動いてくれる。そんな体制が必要だ」と語気を強める。
但木氏は「コンプライアンスと目の前の業務がぶつかった場合は、必ずコンプライアンスを優先すべき。それが会社の永続性につながる」と諭すように訴えた。コンプライアンスに反する企業は生き残れない。自律した組織に関電は生まれ変われるのだろうか。
(川上桂)=おわり=
(福井新聞2020年3月25日付けより転載)