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原発・豪雨・コロナ “三重苦”・・福島・いわき 温泉街悲鳴/“予約の半分キャンセル”

 新型コロナウイルスの影響が福島県いわき市の温泉街にも広がり、旅館などから「原発事故、水害に続く三重苦だ」と悲鳴の声が上がっています。(福島県・野崎勇雄)


(写真)新型コロナの影響は深刻だと話す大場社長=福島県いわき市

 「新型コロナが今の最大の問題。2月下旬からキャンセル増加がはっきり見え出した」と話すのは、老舗旅館「岩惣」(いわそう)の大場敏宣(としのり)社長。「うちの旅館で予約の半分ぐらいがキャンセル。予約数も減り、先週の土曜日(3月7日)はゼロですよ。その後、幾人か飛び込みがあって休まずに済んだが…」と窮状を訴えます。

 福島県旅連(旅館ホテル生活衛生同業組合)によると、2月末時点の2~4月期キャンセル被害額は、会員から提出されただけでも約29億円。3月は歓送迎会や年度末の行事、学生の各種大会などが続く時期で、影響は深刻です。

 いわき市で各業界の代表者らが対策を話し合う場がありました。参加者からは一様に「福島は原発事故による被害が完全には復興していない上、台風19号や豪雨による災害被害、そして新型コロナと三重苦だ」「気持ちが折れるのが怖い」との声が出されたといいます。

 旅館「岩惣」は宿泊客が事故前の半分しか戻らず、東京電力による損害賠償は2年分一括支払いを最後に2017年7月で打ち切られました。「いわきで風評被害は出ていない」の一点張りです。

 「原発事故以来、風評被害は続いている。湯本の温泉利用客は、今も入湯税で見ると6~7割という現状です。賠償に応じない東電に怒っている」と大場社長。賠償支払いを拒否された「岩惣」は同年(2017年)12月から業態変更を余儀なくされました。夕食をやめ、素泊まりか朝食付きだけの営業に変更。板前や仲居らを解雇し、わずかな人数で働かざるを得なくなりました。

 自らも宿泊客への朝食準備を行いながら、「旅館としては、売り物の常磐魚介類などおいしい夕食料理でお客をもてなしたいですよ。本当に悔しい」と心情を吐露する大場さん。「業態変更で2年あまり経営改善に努力し、今年あたり通常ベースに戻りたかった。その矢先のコロナ騒動で困っている」と表情を固くします。

 福島県では今、政府小委員会が汚染水海洋放出に言及したことが大問題になっています。県漁連の鈴木哲二専務理事は「われわれの海洋放出反対の立場は変えようがない」と指摘。大場さんも「観光業界ももちろん海洋放出には反対だ。同時に今はコロナ問題の解決が重要。感染拡大を食い止め、営業と暮らしを守ってほしい」と話しました。

(「しんぶん赤旗」2020年3月15日より転載)