2011年3月11日の東日本大震災で大きな被害を出した東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)について、原子力規制委員会は新規制基準に適合すると認めた審査書を正式決定しました。同原発をめぐっては、原発そのものの危険性にとどまらず、避難計画の実効性について、周辺の住民や自治体から不安と懸念の声が絶えません。それにもかかわらず、「合格」を出したことは重大です。安全を置き去りにした再稼働を推進することは許されません。
大震災で被災した原発
東日本大震災の被災原発の「合格」は、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)に続き、女川原発2号機で2基目です。同機は、大震災で大事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ「沸騰水型炉」(BWR)でもあります。規制委が新規制基準で「合格」させたBWRは東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)、東海第2原発に次いで3原発4基目となりました。
女川原発は、東日本大震災の震源に最も近い原発です。震災の際には、想定を大きく上回る揺れに見舞われ、1~3号機の全てが自動停止しました。さらに約13メートルの津波に襲われ、2号機の原子炉建屋の地下は浸水しました。外部電源5系統のうち4系統が失われ、非常用発電機も被害にあうなど重大事故の一歩手前となりました。
女川原発の立地場所は、もともと地震や津波のリスクが大きいとされています。国の地震調査研究推進本部は、女川原発が面する宮城県沖は今後30年以内にマグニチュード7クラスの地震が発生する確率は90%程度に達すると想定しています。東北電力は、津波の想定を引き上げて高い防潮堤をつくるなどの対策を講じたとし、規制委も了承しました。
しかし、これで安全が確保されるという保証にはなりません。大震災でタービンが大きく損傷し、原子炉建屋にも多くのひび割れが発生したことなどへの懸念は解消されていません。地震の時、実際に安全確保の機能が働くかどうかも疑問視されています。
今回の審査書決定の際、規制委が行った国民からの意見募集には約1000件の意見が寄せられ、そこで地震・津波対策への批判が相次いだことを直視すべきです。
女川原発は牡鹿半島のつけねにあるため、同半島の住民が事故時に安全に避難するのは困難であることなど避難計画への不安は尽きません。19年11月には、同原発から半径30キロ圏内の石巻市民が県・市に対し、避難計画は実効性がないとして地元自治体の「同意」の差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申し立てました。30キロ圏内にある美里町議会は19年12月、事故で「大量の放射性物質が放出されれば、将来にわたり広範囲で深刻な事態が想定」されるなどとして再稼働の中止を求める意見書を可決しました。再稼働に突き進むことに道理はありません。
国民世論に逆らうな
最近の世論調査では、原発再稼働に「反対」56%、「賛成」29%(「朝日」18日付)です。安倍晋三政権の再稼働路線が国民の声に逆らっていることは明白です。1月には広島高裁が、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転禁止の仮処分決定を出すなど、司法からも厳しく批判される事態です。原発固執の政治の転換が急務です。
(「しんぶん赤旗」2020年2月28日より転載)