福井県の石川与三吉県議(89)=自民=が2013〜16年度に44回、現地に足を運ばないカラ出張を繰り返し、政務活動費計約280万円を不正に受給した疑いがあることが7日、分かった。石川氏は共同通信の取材に「現地に行っていない」とする一方、「誰かが誤って(出張に関する)書類を作成、提出したのかもしれない。不正という指摘があるなら返還したい」と述べた。
政活費の不正受給は一時、各地の議会で問題になり、詐欺事件にも発展した。石川氏も捜査を受ける可能性がある。
福井県は条例に基づき、過去6年分の政務活動費の支払いに関する書類を公表。石川氏が議会に提出した視察報告書によると、地元選挙区の敦賀市にある建設会社「塩浜工業」が受注した全国各地の工事現場に44回にわたり出張したことになっており、工事現場の写真や担当者の名刺が添付されていた。
関係者は、石川氏から求めがあれば、塩浜工業側がその都度、写真や名刺を用意して提供していたと証言。石川氏は報告書が誤って作成された可能性があるとしたが、石川氏の事務所の男性(81)は「(石川氏本人から)工事に関する資料や名刺を受け取り、それらに基づき報告書を書いた」と説明した。
塩浜工業は、関西電力役員らに金品を贈っていた福井県高浜町の元助役森山栄治氏(昨年3月に死去)に顧問料を支払ったり、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長(63)に現金100万円を渡したりしていたことが判明している。塩浜工業にも取材を申し込んだが、回答を得られなかった。
福井県議会事務局によると、16年度までは領収書なしで交通費全額と1万5100円までの宿泊費、日当3千円が支給されていた。石川氏が塩浜工業の工事現場を訪れたとする視察報告書は16年12月が最後で、領収書提出が義務付けられた17年度以降は確認できなかった。県議会事務局は「マニュアルにのっとりチェックしているが、議員本人に確認したい」とした。
石川氏は現在7期目。07〜08年には議長も務めた。全国都道府県議会議長会によると、現職の都道府県議では最高齢。
(福井新聞2020年2月8日より転載)
塩浜工業が加担? 石川県議カラ出張疑い
敦賀市の建設会社「塩浜工業」が地元選出の石川与三吉県議(89)のカラ出張に加担した疑いが浮上した。塩浜工業は、九州電力玄海原発が立つ佐賀県玄海町の町長に現金100万円を渡していたことが今年1月に発覚したばかり。
塩浜工業は1955年創業。地元の同業者は「以前はほそぼそとやっていたが、今の社長に代わって県内有数の企業に成長した」と口をそろえる。
信用調査会社などによると、塩浜都広社長は83年ごろ、創業者の父から会社を引き継いだ。関西電力大飯原発などの関連工事を多く手掛けるうち、鉄板の加工技術が高く評価されるように。90年代に入ると、東京や大阪などに支社や支店を構えた。
(福井新聞2020年2月8日より転載)