東京電力福島第1原発で増え続ける放射能汚染水を除去設備で処理した後のトリチウム(3重水素)を含む汚染水。国の小委員会が「海洋放出の方が確実」とする報告書を大筋了承し、地元の漁業者などから強く反対する声が上がっています▼報告書は、政府が処分方法を決定するための判断材料とされています。これまで汚染水の流出が繰り返されてきました。その中で東電は海への放出計画を持ち出し、批判されると「関係者の了解なしに放出しない」といい、政府は「安易な放出はしない」といっていました▼昨秋は、当時の環境相が「思い切って(海に)放出して希釈するしかない」と発言し、漁業団体から撤回を求められたこともありました。東電や政府に対して、地元はじめ国民の不信は根強いものがあります▼福島第1原発では9年前の事故で溶け落ちた原子炉内の核燃料に触れた汚染水が毎日170トン増えています。雨水や地下水が建屋に流入しているためです▼東電は、多核種除去設備と呼ばれる装置で取り除けないトリチウムを含む汚染水を1000基近いタンクにためています。報告書は「タンク増設の余地は限定的」として、敷地内での長期保管を選択肢から外しています。海洋放出について「社会的影響は特に大きくなる」と指摘する割に、議論が尽くされたか疑問は尽きません▼海洋放出は福島県漁業に致命的な打撃を与えかねないと、県漁連会長が海洋放出に反対する意見の中で、こう述べていました。「築城10年、落城1日」
(「しんぶん赤旗」2020年2月7日より転載)