日本の地球深部探査船「ちきゅう」で東北地方太平洋沖地震発生の現場を調査した結果、東北地方や関東地方の太平洋沿岸を襲った巨大津波発生のしくみが明らかになった—。海洋研究開発機構や国内6大学の研究者が参加する国際研究グループが研究成果を3編の論文にまとめ、12月6日発行の米科学誌『サイエンス』に発表しました。
東北地方太平洋沖地震は2011年3月、日本列島の東半分が乗る北米プレートとその下に沈みこむ太平洋プレートの境界にある断層で発生しました。これまでは地震性すべりを起こさないとされていた境界の浅い部分が水平方向に約50メートル、垂直方向に7~10メートルと大きくすべったことが巨大津波につながったと考えられています。
研究グループは地震から1年あまりたった昨年(2012年)4月から7月にかけ、「ちきゅう」で仙台市の沖合約200キロの海底を掘削しました。ここは太平洋プレートが沈み込む日本海溝の海溝軸からやや陸側で、海底からそれほど深くないところにプレート境界があります。
水深6900メートルの海底を深さ850メートルまで掘削した結果、深さ820メートルのところにプレート境界の断層が確認できました。地質の特徴などから、この部分の断層は厚さが5メートル以下と非常に薄いことが判明。さらに、断層の地質資料を持ち帰って実験したところ、強度が低く水を通しにくい性質の遠洋性粘土を多量に含んでいて、地震時に断層をすべりやすくしたと考えられることがわかりました。
掘削から9ヵ月にわたって断層に残った摩擦熱を測定した結果からも、断層が極めてすべりやすい状態だったことが推定できたといいます。研究グループは、南海トラフなどほかのプレート境界でも新たな視点での研究が必要だとしています。