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伊方原発差し止め・・地震でも火山でも危険は明白

 広島高裁は17日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について「運転してはならない」とする決定を出しました。同原発から50キロ圏内にある瀬戸内海の島(山口県)の住民が求めた運転差し止めの仮処分の申し立てを認めたものです。決定は、四電の原発近くの活断層調査が不十分であり、火山噴火の影響も過小に見積もっていると認定し、安全性に問題がないとした原子力規制委員会(規制委)の判断は「過誤」「不合理」だと断じました。安倍晋三政権と電力業界が推進する原発再稼働に対する司法からの厳しい警告です。

規制委の判断は「過誤」

 伊方3号機は現在定期検査で運転停止中です。仮処分は直ちに法的拘束力を持つため、定期検査が済んでも運転を再開できません。

 仮処分の争点の一つは、地震リスクについてです。住民側は同原発の沖合約600メートルに活断層がある可能性を主張しました。国内最大規模の「中央構造線断層帯」に関連するものです。

 2011年の東京電力福島第1原発事故後にできた新規制基準では、原発の敷地から2キロ以内に震源域がある場合は、特別の評価を行うよう定められています。ところが、四電は十分な調査をしないまま活断層は存在しないとして、規制委に審査を申請し、規制委も、これを問題ないとしました。

 しかし、国の地震調査研究推進本部が公表した「中央構造線断層帯の長期評価(第二版)」では「今後の詳細な調査が求められる」と記しています。広島高裁は、この記載などに基づき、活断層がある可能性は否定できず、四電の調査も不十分であるとしました。運転にお墨付きを与えた規制委の甘い判断を「過誤ないし欠落があった」と指弾したことは重要です。活断層の危険を訴える住民の声を受けて具体的に検討した結果であり、当然の司法判断と言えます。

 さらに高裁決定は、原発から約130キロにある阿蘇山(熊本県)の噴火のリスクについて、「破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火」を考慮すべきだと指摘しました。その噴火による火山灰などの降下火砕物の噴出量を20~30立方キロメートルとしても、四電が想定した噴出量の約3~5倍に上るとして、四電の想定は過小だと判断しました。その上で、このような想定を前提にした設置許可申請と、それを前提にした規制委の判断は「不合理」だと述べました。

 地震、火山の両面で、規制委の審査と判断に重大な欠陥があることを示した今回の高裁決定は、「規制委が世界で最も厳しい新規制基準に適合すると認めた原発のみ再稼働させる」(安倍首相)とする政府の主張が成り立たないことも浮き彫りにしています。

再稼働の条件はない

 伊方原発の運転差し止めの司法判断は、別の住民の仮処分申し立てを認めた17年12月の広島高裁の決定に続き2回目となります。当時の決定はその後、四電の異議を認めた広島高裁の決定で覆されましたが、再び差し止め決定が出された重みを、政府も電力業界も真剣に受け止めるべきです。

 伊方以外の原発でも直下の活断層などが問題になっています。日本は、世界有数の地震国・火山国であり、原発を動かす条件はありません。再稼働中止・原発ゼロに進むことこそ必要です。

(「しんぶん赤旗」2020年1月22日より転載)