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原発この1年 推進路線の破綻一層あらわに

 2019年は、安倍晋三政権の原発推進の破綻が一層鮮明になった年でした。年初には、日立製作所がイギリスでの原発建設事業の凍結を決定し、日本の原発輸出計画は総崩れとなりました。新たな原発の再稼働はなく、関西電力の原発マネー還流事件で原発利権の闇が大問題となっています。核燃料サイクルも行き詰まっています。中核施設の高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉措置に入り、フランスも高速炉建設を断念しました。

経済界からも疑問の声

 安倍政権は19年度から、日立製作所、東芝、三菱重工などの新型原発開発への補助を始めました。20年度は、関連機器メーカーへの支援も始めようとしています。業界への露骨な支援です。

 しかし、原発は高コストであり、ビジネスとして成り立たなくなっています。原発輸出が建設費高騰でとん挫しただけでなく、国内でも原発「安全対策費」の見積もりが年々増え、電力11社の合計で約5兆4千億円にのぼります。

 日本経済団体連合会の夏季フォーラムでも、原発再稼働は「本当にベストなのか」「グローバルな方向と逆に向かっているのでは」との疑問が出されました(「朝日」7月23日付)。原子力業界のアンケートでは、30年度の発電量の原発比率20~22%という政府の「エネルギー基本計画」が掲げた目標について、半数が「達成出来ない」と答えています(「原子力発電に係る産業動向調査2018」)。

 関電の高浜原発(福井県)をめぐるマネー還流事件は、前原子力規制委員会委員長の田中俊一氏が「このままでは原発はなくなる」(福井新聞10日付)と述べるなど、衝撃が広がっています。高浜町議会は真相究明を求める請願などを採択しました。政府・政治家との関係を含めた全容解明と黒い関係の清算が求められます。

 地球温暖化対策で安倍政権が決定した「パリ協定長期戦略」には、原発再稼働が明記されています。30年度の電力の26%を石炭火力に依存することも前提とされています。世界の温暖化対策では、原発はすでに議論の対象外であり、主流は再生可能エネルギーと脱石炭火力です。安倍政権の原発・石炭火力への固執こそ、温暖化対策の障害物に他なりません。

 東京電力福島第1原発事故は、甚大な被害と環境汚染を引き起こしました。事故から9年近くたっても帰還できない地域があり、4万人以上(福島県集計)が避難生活を余儀なくされています。この実態を踏まえれば、原発を「環境対策」として利用するという選択肢はありえません。

 福島県では、県内全基廃炉という「オール福島」の声が、東電に福島第2原発の廃炉を決めさせました。原発立地県で初めて「原発ゼロ県」への道が開かれました。

原発ゼロへの扉を開く

 7月の参院選では市民と野党の共通政策に、「福島第一原発事故の検証や、実効性のある避難計画の策定、地元合意などのないままの原発再稼働を認めず、再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発ゼロ実現を目指すこと」が掲げられました。再稼働反対、原発ゼロ基本法実現のたたかいを強め、市民と野党の共闘で、安倍政権を打倒し、「原発ゼロの日本」への扉を開きましょう。

(「しんぶん赤旗」2019年12月29日より転載)