東京電力ホールディングスは、日本原子力発電(原電)が所有する東海第2原発(茨城県東海村)再稼働のための資金支援を正式に決定しました。再稼働に向けた「安全対策」費約3500億円のうち、東電が約2200億円を負担するとされています。
東電は、2011年に福島第1原発事故を起こしたことへの反省もなく、甚大な被害を受けた福島県民への賠償責任を果たしていません。その会社が原発を再稼働させるために他社に巨額な資金支援を行うことなど論外です。
賠償と廃炉の責任こそ
東電の東海第2原発への支援は、28日の取締役会で決めました。支援全体の枠組みは、東海第2原発からの電気をもらう東電と東北電力、原電の敦賀原発2号機(福井県)から受電する関西電力、中部電力、北陸電力の合計5社が約3500億円を出し合うというものです。
電力会社が総がかえで、東海第2原発の再稼働を後押しするという仕組みです。その中心になっているのが、約6割の資金を負担する東電です。
東電の姿勢には一片の道理もありません。8年7カ月前の重大事故によって、いまも4万人以上が故郷に帰れず、事故収束も見えない未曽有の被害をもたらしたことへの反省がまったくありません。
ふるさとを破壊され、生活や生業(なりわい)を奪われた人たちへの東電の冷たい姿勢は、賠償を迅速にすすめるために集団で申し立てた「裁判外紛争解決手続き(ADR)」の和解案を拒否していることに示されています。
加害者として責任を取らず、自社の柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の推進だけでなく、他社原発まで動かそうというのは許されません。
東電がやるべきことは被害者への賠償をしっかり行うとともに、収束と廃炉、除染などに最後まで責任を果たすことです。
だいたい東海第2原発を再稼働させようとすること自体が大問題です。同原発は東日本大震災の津波で被災し、それ以来、停止したままです。昨年11月に40年間の運転期限を迎えた「老朽原発」でもあります。それにもかかわらず原子力規制委員会は、運転延長を認め、住民や周辺自治体の反対が続いています。周囲30キロ圏内に90万人以上が居住し、事故の際の実効性のある避難計画の策定はきわめて困難になる中、再稼働の見通しはたっていません。
しかも、「安全対策」費は当初の約1740億円から2倍の、3500億円まで膨らむなど、どこまで費用がかさむかも不透明です。その増えた負担を求められるのは電気代を払う国民です。東電は東海第2原発を動かせば電気代が安くなるかのようにいいますが、その根拠は揺らいでいます。破綻した東海第2原発の再稼働の断念こそ必要です。
国民の声に逆らうな
東電の東海第2原発支援について、安倍晋三政権が「経営陣の裁量で」(梶山弘志経済産業相)などというのは無責任です。東電は事実上「国有化」されており、国は大株主です。政府は東電のやり方を認めてはなりません。国民の声に逆らう賠償切り捨てと一体の再稼働推進の政策は、ただちにやめるべきです。
(「しんぶん赤旗」2019年10月31日より転載)