東京電力の小早川智明社長は8月26日、柏崎刈羽原発(新潟県)の立地先である柏崎市の桜井雅浩市長を訪ね、同原発の廃炉要請に対して「6・7号機の再稼働後5年以内に1基以上の廃炉を検討する」との方針を伝えました。東電が柏崎刈羽原発の廃炉に言及したのは初めてですが、再稼働が前提です。
2017年に6・7号機が国の安全審査に合格して以降、桜井市長は再稼働を認める前提として1~5号機の具体的な廃炉計画の提出を東電側に求めていました。
会談で小早川社長は、現時点において同原発1~5号機が「必要な電源」であると再稼働にこだわる姿勢を強調。その上で、太陽光など「十分な規模の非化石電源の確保が見通せる状況」になれば、6・7号機再稼働後の「5年以内に1~5号機のうち1基以上について、廃炉も想定したステップ」を踏む、との方針を説明。市長が回答を求めていた廃炉対象の号機は明示されませんでした。
桜井市長は、東電の方針に対し「今の段階で考える、できる限りの案を出していただいた」と、一定の評価をする見解を表明。東電の方針を議会や市民に示し、議論していく旨を語りました。
とうてい認められない
日本共産党の持田繁義・柏崎市議団長のコメント 県民の声に押されて東電が廃炉に言及したが、再稼働を前提としたばかりか廃炉も「検討」にとどまり、とうてい認められない。「原発ゼロ」を決断してこそ、再生可能エネルギーのポテンシャル(潜在的な力)を最大限生かせる。桜井市長にも「6・7号機再稼働に固執する必要はない」と伝える。
柏崎刈羽原発 経営優先 廃炉計画示さず
新潟大学名誉教授 立石雅昭さん
東電の回答は、柏崎刈羽原発の1~5号機の廃炉の道筋を当面考えないというもので、県民、国民の思いを全く無視しています。6、7号機の再稼働は認めるが、1~5号機の廃炉を求めていくという一部の声をも裏切る中身で、話になりません。
東電が柏崎市に示した「再稼働および廃炉に関する基本的な考え方」には、1~5号機は電力供給の上で必要な電源だと説明しています。しかし、どれもずっと動いていない原発です。2~4号機は中越沖地震以来、10年以上止まったままです。それを経営優先で温存しようという発想であり、絶対に許されません。
柏崎市長が1~5号機に関して廃炉計画明示の要請をしてから2年以上になりますが、東電の回答は、6、7号機が再稼働した後5年以内に、「廃炉も想定したステップを踏む」というだけで、具体的な廃炉計画も示していません。この程度の内容ならいつでも回答できたのではないか。真剣に回答するつもりで検討したのかさえ疑問です。
(「しんぶん赤旗」2019年8月27日より転載)