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シリーズ再エネの普及 循環型社会へ・・反原発から広がるパネル

閑静な住宅街で運転中の「宝塚すみれ発電」3号機(右)=兵庫県宝塚市山本山手地区

耕作放棄地 屋根 農地の上にも…

 日傘をさし、子どもの手を引く母親が行き交う閑静な住宅街に太陽光パネルが建っています。15キロメートル先に大阪湾を望む兵庫県宝塚市山本山手地区の丘の斜面で運転されるのは市民電力「宝塚すみれ発電」の3号機(発電容量45・36キロワット)です。2015年3月に完成しました。

 (小梶花恵)

兵庫・宝塚

 宝塚すみれ発電の太陽光発電は市内と丹波市に6基(計186キロワット)あります。東日本大震災の東京電力福島第1原発事故をきっかけに設立されたNPO法人「新エネルギーをすすめる宝塚の会」が12年、宝塚市内の耕作放棄地に1号機を設置して始まりました。理念に賛同してくれた寺の敷地や市有地、市民農園、牛乳工場の屋根などに次々と設置しました。

 代表取締役の井上保子さんは「再生可能エネルギー推進に賛同してくれた宝塚市民が設置に参加し、協力金を出してくれました。協力金をお願いした相手が共感して会員になってくれたこともあります」と話します。

 電力小売りに参入した生活協同組合コープこうべと18年に契約。「すみれ発電の電気を使いたい」という市民がコープこうべを通じて太陽光発電の電気を買えるようになりました。

生協と連携して

 コープこうべは「消費者にとって生活必需品である電気も環境に配慮したものを」と考え、「再エネや環境負荷の小さい電気を使いたい」という組合員の要望にも応えて太陽光、バイオマス、天然ガスによる電力「コープでんき」の供給を始めました。コープこうべ環境推進統括の益尾大祐さんは「原発事故の後、組合員からの要望が増えた」と言います。電気の営業活動をすると「前から興味あってん」「原発とか石炭火力の電気は買いたくなかった」との反響が。現在3万4千世帯が契約しています。

再エネの電気を供給するコープでんきの案内

 どこから買っても電気は同じと考える人には「コープでんきの契約者が増えれば、原発や石炭火力を減らすことにつながる」と説明しています。「コープでんきへの切り替えが増えれば再エネと天然ガスの調達を増やします」と益尾さん。原子力や石炭火力の電気を調達しない方針です。

 宝塚すみれ発電の4号機は農地の上で耕作と太陽光発電を両立させるソーラーシェアリングとして建てました。甲子園大学の学生やコープこうべの組合員、市民がそこで無農薬のサツマイモを栽培します。

 甲子園大学栄養学部フードデザイン学科では毎年、学生20人前後が4号機の下で耕して畝を作り、収穫、サツマイモ料理のメニュー開発まで取り組んでいます。同学科の鎌田洋一教授は「環境に負荷をかけない農業ができるところがいい。将来的には学生が開発した商品をコープこうべで売り出してもらえれば」と期待します。

県が無利子融資

 県が14年に始めた再エネ発電への無利子融資でパネル建設費用の返済が楽になったと宝塚すみれ発電の井上さんは話します。県はこれまでに9件の太陽光発電に融資しています。県温暖化対策課の担当者は「20年までに50億キロワット時、30年に70億キロワット時をめざし、総発電量の12%を再エネにしたい」といいます。

 井上さんは「再生可能エネルギー普及のための『固定価格買取制度』が終わっても、パネルを各家庭や事業所で使い続け、脱原発につなげていきたいですね」と話しました。

(「しんぶん赤旗」2019年6月18日より転載)