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福島に生きる いわき市民訴訟原告 佐藤明美さん(61)・・「子どもの現実知って」

 「ふるさとを失った子どもたちの気持ちを受け止めてほしい」。佐藤明美さん(61)は、国と東京電力を相手に福島第1原発事故による被害の原状回復と損害賠償を求めている「いわき市民訴訟」(伊東達也原告団長)の原告です。

■小学校教師務め

 佐藤さんは元小学校教師で、昨年3月、定年退職しました。

 「3・11」の日、人口30万人を超える福島県いわき市は、大混乱となりました。「子どもたちの家庭の実に3分の2以上は避難を選択した」と佐藤さんは言います。

 いわき市の教育委員会は、4月6日からの学校再開を決めました。あまりにも早い再開に保護者のなかからは、通学時の安全性や放射線量についての不安の声が起きました。

 現場の教職員からも反対の声が上がりました。

 屋外活動や、課外活動の制限、花壇や畑での栽培活動の中止で、子どもたちは教育の場で自然と触れ合う授業が受けられなくなりました。

 佐藤さんは「福島の子どもたちは転校をくりかえさせられ、バラバラにさせられました。そのうえ屋外での活動が禁止されて、肥満の子が増えて不健康な状況におかれました」と言います。

 体力テストをしても、福島県は運動能力、筋持久力、遠投力などが落ちていることが分かっています。

■米軍事故を機に

 佐藤さんが原発や政治に関心を持つようになったのは大学生の時でした。1977年9月に横浜市でおきた米軍機の墜落事故―。市民3人が死亡し、6人が負傷。米軍乗組員は緊急脱出し、海上自衛隊のヘリコプターに救助されました。

 「米国に従属している日本」について考えるようになりました。

 「原発建設にはもともと反対してきました。しかし、『現実には原発事故は起きないだろう』と、楽観的に思っていました。安全対策がしっかりとられていれば原発事故は防げたのにとっていなかった。許せない」と、いわき市民訴訟の原告に加わりました。教職員組合いわき支部の最初の原告です。

 「私がこの訴訟の原告になったのは、お金がほしいからではありません。いわき市内の生徒や先生が置かれている現実を、国や東電の人に分かってもらいたいからです」

 佐藤さんは、訴訟で陳述しました。

 「事故の収束のために国を挙げて取り組むべきです。ところがオリンピック誘致に走り、『原発はコントロールされている』などとうそぶく安倍首相です。東京電力は、放射能漏れ、汚染水漏れを隠し、事故後に報告する。私たち福島県民をばかにした姿勢です。私たちは学びました。国は『原発はもうやめる』と宣言すべきです」(菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2019年4月1日より転載)