日立製作所が英国で計画していた原発建設計画の凍結を発表するなど、安倍晋三政権の「原発輸出」政策が完全に行き詰まっています。安倍首相は「粘り強く推進していく」とこだわる姿勢を示しますが、官民一体で進めてきた国策の総破綻は隠しようもありません。安全対策に費用がかさむ原発は、高コストでビジネスとして成り立たなくなっていることが、世界の流れとして明らかになっています。その現実を直視して、これまでの政策からの根本的転換をはかるときです。
直近で輸出実績はゼロ
日立製作所は、英国での原発建設の凍結理由について、「民間企業としての経済合理性の観点」と発表しています。英国のほか、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、ベトナム、ポーランド、リトアニアなどで日本の官民が推し進めた計画も、原発の「安全対策費」の高騰などに直面し、原発プロジェクトは全てとん挫しました。
安倍首相が原発輸出を「成長戦略」の柱に位置づけ、外遊に原発メーカーなどを同行させるトップセールスを繰り返し、売り込みをはかってきた責任は重大です。
第2次安倍政権発足の翌年(2013年)に策定された「インフラシステム輸出戦略」は、原子力の世界市場は拡大が見込まれるとして、10年には原子力の海外受注が3000億円だったのに対し、20年には2兆円にするという目標を掲げてきました。
実際はどうか。13日の衆院予算委員会で、日本共産党の笠井亮政策委員長に追及された世耕弘成経済産業相は直近の16年は、「原発のプロジェクトとしての輸出額はない」と、実績ゼロであることを認めざるをえませんでした。20年に2兆円になることなどどう考えても、ありえません。世耕氏は、日本の原発輸出にはまだまだ期待があると言い張りましたが、具体的な計画は示せず、説得力はありません。「机上の空論」にしがみつこうとするのはやめて、原発輸出をきっぱり断念すべきです。
安倍首相は原発輸出を正当化する議論として、「日本の原子力技術や人材の基盤の維持強化」を持ちだしますが、理由になりません。「技術・人材」というなら、日本で直面している原発の課題は廃炉であり、その技術と人材こそきちんと確保することが必要です。
東日本大震災から8年近くたっても東京電力福島第1原発事故は収束せず、多くの福島県民が避難生活を強いられている中で、事故を起こした原子炉メーカーと一体で原発輸出を進めるやり方自体、倫理的にも許されません。
世界の流れに逆らうな
国際エネルギー機関(IEA)がまとめた世界エネルギー展望(18年)の電力市場規模の見通しでは、40年に再生可能エネルギーは180兆円プラスになる一方、原子力は20兆円プラス、火力は90兆円マイナスになるとしています。国際的な潮流がどちらを向いているかは明白です。原発や火力に執着する安倍政権は、世界の流れも市場動向もわかっていません。
野党4党が共同提出した、原発ゼロ、再エネへの抜本的転換をめざす「原発ゼロ基本法案」を国会で直ちに審議し、実現を急ぐべきです。原発ゼロに背を向け、原発再稼働に固執する安倍首相に、もう政治は任せられません。
(「しんぶん赤旗」2019年2月17日より転載)