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社会リポート 福島第1原発 アルプスで分離 2次廃棄物・・水処理後の汚泥 放射能の“本体”

「水処理2次廃棄物」の保管場所(白線で囲ったエリア)。その右奥に4号機、3号機の原子炉建屋が見えます=今年2月(本紙チャーター機から撮影)

被ばくや環境への影響 懸念

 東京電力福島第1原発では、多核種除去設備(アルプス)で放射能汚染水を処理した後に残る汚泥などの「水処理2次廃棄物」の取り扱いが大きな問題の一つです。この廃棄物は「スラリー」などと呼ばれ、処分方法が決まっていません。高線量であることから作業員の被ばくや環境への影響を懸念する声が上がっています。(唐沢俊治)

 「アルプスで汚染水から分離した放射性物質が入っているのがスラリーです。処理設備で分離しただけで、デブリ(溶け落ちた核燃料)の一部が水と混ざって外に出てきたようなものです」。舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)はそう解説します。

人が直接扱えず

 「2次」というものの、汚染水に含まれる放射性物質が濃縮された状態です。東電の資料によると、アルプス処理の前後で、放射性セシウム、ストロンチウム90の99・9%以上が汚染水から除去されています(今年度8月までの平均)。汚染水に含まれていた放射性物質のほとんどが2次廃棄物になります。いわば汚染水の放射能の“本体”です。

 汚染水を環境に放出する場合の国の基準(告示濃度限度)は、ストロンチウム90で1リットル当たり30ベクレルです。一方、2次廃棄物の放射能はどうか。

 東電の資料によると、スラリーは、約6469立方メートル(今年5月時点)。放射性物質濃度は高いもので、ストロンチウム90を1リットル当たり約400億ベクレル含みます。

 高濃度の放射性物質を含む2次廃棄物は他にもあります。原発事故の直後に除染装置から生じた沈殿物「スラッジ」です。約37立方メートルあり、ストロンチウム90を同約3000億ベクレル含みます。

 舘野氏は「デブリが一番多くの放射性物質を含んでおり、炉心放射線量は人が短時間いただけで致死量になります。スラリーなどは、デブリと比べて低い濃度ですが、それでも極めて高く人が直接扱うことはできません」。

対策など山積み

 2次廃棄物の多くは現在、アルプスの処理で生じています。アルプスではスラリー以外にも、放射性物質の吸着材が2次廃棄物として出てきます。ポリエチレン製の容器に入れて、敷地内で保管しています。

 2次廃棄物は、保管にもリスクがあります。2015年、アルプスの2次廃棄物の保管容器の内部で生じた水素ガスにより、液体が噴き出す事故が続出しました。今後の保管に当たっては、漏えい防止対策などが山積みです。

 国と東電は、中長期の廃炉計画で2次廃棄物について、比較的水分が多いとされるスラリーやスラッジの保管・管理リスク低減のため「安定化・固定化等」を掲げています。しかし、具体的な方法は決まっておらず、脱水処理するための技術開発を進めている段階です。詳細な性状さえつかんでいないのが現状です。

 舘野氏は言います。「今後、具体的にどう取り扱うのか、避けられない大きな課題です。相当慎重な対策を取らなければ、作業員の被ばく線量が増えることや、環境汚染の可能性もある」

(「しんぶん赤旗」2018年12月17日より転載)