原子力規制委員会は26日、日本原子力発電(原電)東海第2原発(茨城県東海村)について再稼働に必要な新規制基準に適合するとの審査書を正式決定しました。基準適合は8原発15基目で東日本大震災で被災した原発では初めて。規制委の会合が開かれた東京都港区のビル前では市民らが「老朽原発の再稼働反対」「審査をやり直せ」と抗議の声を上げました。
首都圏で唯一の原発で、避難計画の策定が義務づけられた半径30キロ圏に全国の原発で最も多い96万人が暮らします。避難計画の策定は進んでおらず、その実効性など課題が置き去りのままです。
7月の審査書案に寄せられた意見は1259件。「防火対策が不十分」とケーブルの防火対策に集中し、「首都圏にある東海第2原発は、もしも事故が起きてしまったら取り返しのつかない事態になってしまう」「周辺に多くの核施設、核廃棄物があり、危険極まりない」という意見も。再稼働反対の4938人の署名も提出されました。
11月27日に運転期限の40年になる老朽原発。運転を続けるには、運転期間延長と、設備の詳細設計を記した工事計画の二つの認可が必要で、いずれも審査は終盤です。しかし、再稼働には、立地する県や東海村に加え、水戸市など周辺5市の事前了解が必要です。
防潮堤の液状化対策などで増えた約1740億円の工事費用を原電が負担できるかも審査対象になり、原電が賄えない分を東京電力と東北電力が支援の意思を表明。公募意見で「政府の資金が投入されている東京電力から資金調達するのは道理がない」と批判されています。
解説
東海第2原発は、大規模な事故が起きれば、その被害は人的にも経済的にも国内で最も深刻な被害を引き起こすと考えられ、実効性ある避難計画は困難です。立地不適とし、運転を認めるべきではありません。
事前の避難計画が必要な東海第2原発の30キロ圏内には、県庁所在地の水戸市が含まれ約96万人が居住。しかし、避難計画づくりは一部の自治体でしか進んでいません。東京都心まで120キロで、原子力災害時の風向きによっては都心にも高濃度の放射能プルーム(汚染雲)が、もたらされる危険性があります。
近隣には、日本原子力研究開発機構などの多くの原子力施設のほかLNG基地や火力発電所などの施設が立地しています。原子力災害を引き起こすような自然災害時には、近隣施設でも被害が発生する可能性があります。その場合、それぞれの施設での事故対応、住民の避難や安全の確保がいっそう困難になると予想される場所です。
さらに東海第2原発は、東日本大震災で被災した老朽原発です。新規制基準で求められているケーブルの難燃化も取り換えは一部にとどまり、あとは防火シートをまくなどの信頼性が劣る対策で、規制委はよしとしました。
原電が東海第2原発を新規制基準に対応させるために必要としている約1740億円の一部を東電は資金援助すると表明しています。
福島原発事故の被害者への賠償を渋っている東電に、他社を資金的に援助することが許されるのか―疑問の声が上がっているのは当然です。(松沼環)
(「しんぶん赤旗」2018年9月27日より転載)