国の原子力委員会が、「プルトニウム保有量を減少させる」という、新たな「プルトニウム利用の基本的な考え方」を7月末決定しました。15年ぶりの改定です。
核兵器の原料にもなるプルトニウムを大量にため込んでいる日本に対し、核不拡散の観点から国際的懸念が強まるもとで、「保有量減少」を言わざるを得なくなったものです。7月初めに閣議決定された「エネルギー基本計画」にも、アメリカの要求をうけて「プルトニウム保有量の削減に取り組む」と書き込まれました。
核弾頭6千発分に相当
日本では、原発の使用済み核燃料に含まれるプルトニウムを取り出し再利用する核燃料サイクルの実現をめざしてきました。そのため、プルトニウムを核燃料とする高速増殖炉もんじゅの開発と再処理工場の建設をすすめつつ、使用済み核燃料の再処理を英仏に委託してプルトニウムをためてきました。ところが、もんじゅは、23年前のナトリウム漏れ火災事故を機に開発が頓挫し、2年前に廃炉が決定しました。代わりに、普通の原発でプルトニウムを核燃料とするプルサーマルを16~18基で実施するとされましたが、事故・事件が相次ぐ核燃料サイクルに対して批判が高まり、実績は4基にとどまっています。
日本は、「利用目的のないプルトニウム」は持たないとしつつ、実際には利用見通しが立たないまま、再処理をすすめプルトニウムをため続けてきました。現在、日本が国内外に保有するプルトニウムは、非核兵器国では桁違いに多く47トンを超えています。核弾頭6千発に相当する量です。
プルトニウムの大量保有という異常な状態は、核燃料サイクルの破たんの結果です。ところが安倍晋三政権は、核燃料サイクルに固執し、プルサーマルを進めようとしています。プルトニウム削減を口実にしていますが、プルサーマル1基で消費できるプルトニウムは年間0・5トン程度であり、焼け石に水です。
しかも、2021年竣工予定の再処理工場(青森県)が操業すれば、年間約7トンのプルトニウムがつくられます。原子力委員会の「基本的な考え方」は、「プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ」再処理を実施するとしていますが、削減を掲げながらプルトニウムを生産するというのは、誰が見ても矛盾した方針です。再処理工場を動かさず、核燃料サイクルをあきらめるべきです。
日本は、日米原子力協定のもと、非核兵器国で唯一、再処理とプルトニウム利用など核燃料サイクルを認められています。しかし、核拡散防止のためには、核兵器開発につながりかねないプルトニウム利用を拡大すべきでないというのが、国際的な常識です。日本がプルトニウム利用にしがみつくことは、国際的な核拡散防止の努力に水を差すものです。
外交・経済的に利点なし
日本にとって、プルトニウム利用は外交的にも経済的にも何の利点もありません。安倍政権は、高速増殖炉開発に失敗し核燃料サイクルが破たんした現実を認め、プルトニウム利用を断念し、核燃料サイクルから手を引くべきです。なにより、あらたなプルトニウムを生み出すことになる原発再稼働も断念すべきです。
(「しんぶん赤旗」2018年8月23日より転載)