中国電、課題山積のまま
中国電力は10日、建設中の島根原発3号機(松江市)の稼働に向けた適合性審査を原子力規制委員会に申請しました。東京電力福島第1原発事故後、建設中の原発の申請は、2014年12月の電源開発大間原発(青森県)に続く2例目となります。島根原発は国内で唯一、県庁所在地にあり、防災計画が義務づけられる30キロ圏に島根、鳥取両県の約47万人が暮らす6市が含まれ、事故時の避難の実効性など課題が山積したままです。(関連15面)
新規制基準への申請は27基目。3号機は福島第1原発と同じ沸騰水型の改良炉で、出力は137万キロワットで国内最大級。本体の建設は大間原発より進み、ほぼ終わっています。中国電は新規制基準に対応した工事を19年上期に完成するとしており、審査によっては、震災後に新規稼働する初の原発となる可能性があります。
島根原発をめぐっては、中国電が13年12月に隣接の2号機の再稼働に向けて申請。審査の中で、原発の2キロ南の松江市内を東西に走る活断層「宍道(しんじ)断層」の長さについての中国電の評価に何度も疑問が呈された経緯があります。
住民の意見くみとれ
島根大学名誉教授で島根原発・エネルギー問題県民連絡会(エネ連)の保母武彦事務局長(76)の談話
このような事態になったのは、住民の意見も聞かず、国いいなりの姿勢をとってきた県や立地自治体の松江市、周辺自治体が地方自治の精神を欠いていることによるもの。地方自治を再建することが原発問題を語るうえで重要だと明確になった。この意味でも原発問題はこれからが本番だといえる。「エネ連」では、科学的に原発問題を検討できる専門家から成る委員会の設置を提案してきた。県や市の安全対策協議会など現行の審査体制では住民の意見をすべてくみ取ることもできず、科学的な判断もできない。
国民多数の声に逆らう無謀
解説 震災前から建設中だった島根原発3号機の必要性について中国電力は住民説明会などで、安倍政権が閣議決定したエネルギー基本計画を盾にとって、「電源構成のバランスを改善」「早期稼働が必要不可欠」などと住民に押しつけています。同計画は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度の電力の20~22%を原子力で賄うと明記しており、既存のすべての原発の運転をねらったものです。
福島原発事故を経験した国民の大多数は「原発ゼロ」「原発の再稼働反対」を求め、その声は揺るぎません。3号機が新たに稼働するなら、今世紀後半を超えて、原発の危険にさらされることになります。
事故が起きた時の住民避難の実効性には大きな問題が指摘されており、動かせば、処理・処分の見通しのない「核のゴミ」が増えるなど無謀な原発の運転はやめるべきです。(「原発」取
(「しんぶん赤旗」2018年8月11日より転載)