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再生エネ 環境・住民守る規制整備急げ

 「原発ゼロ」の実現や温暖化抑制のためにも風力や太陽光などの再生可能エネルギーの導入が喫緊の課題となっています。ところが、こうした再生可能エネルギーの取り組みも、環境規制の弱い日本では、きちんとしたルールや規制が未整備のまま、利益追求を優先した乱開発が起き、環境破壊や住民の健康・安全にかかわる問題を引き起こしています。和歌山、栃木両県の様子を見てみました。

和歌山 山林削り災害危険増 町長「事業者態度寒すぎる」

 和歌山県では各地で大型風力発電や大型太陽光発電の計画があり、いずれも山林を大きく削る計画に、住民からは災害の危険性が増大するなど不安の声があがっています。日本共産党は国会や地方議会で同問題を取り上げ、住民の声を代弁しています。

低周波被害も

 自然エネルギーの名の下での開発による住民被害は、すでに和歌山県内で問題になっています。各地の山林につくられた風力発電が稼働を始めてから風車がおこす低周波による健康被害を住民らが訴え、旧下津町(現海南市)では2世帯が引っ越しを余儀なくされました。また、風力発電の事業者が自治会費名目の金銭で住民の口封じをする「覚書」が明らかになり、県議会で日本共産党の雑賀光夫県議が、国会で同岩渕友参院議員がとりあげるなど問題になりました。

視察する堀内氏(右端)ら=和歌山県紀美野町

 このようなトラブル続出のもと、海南市、紀の川市、紀美野町、有田川町にまたがる大型風力発電が計画されています。出力4500キロワットの風車43基を山の上に設置するというもので、風車は高さ150メートルという巨大さです。紀美野町では低周波公害への不安とともに、土砂災害の発生しやすい地域での木々の伐採に強い不安を訴えて区長(自治会長)会が反対を決議。堀内照文党前衆院議員と党地方議員団が区長会の案内で現地を調査しました。有田川町では増谷憲党町議の質問に中山正隆町長が「一番危惧しているのは事業者の寒すぎるともいえる地域住民への態度」と事業者への不信感をあらわにしました。

情報入らない

 和歌山市北部の和泉山脈では千手川をはさんで二つ大型太陽光発電が計画され、面積74・3ヘクタール・発電出力48・8メガワットと面積132・2ヘクタール・発電出力76・6メガワット。合わせると甲子園球場の53倍もの山林を削る計画地の直下には住宅地が広がっています。地元連合自治会や水利組合、隣接自治会などが建設反対を決議。日本共産党の市田忠義参院議員が現地を調査し、党県議団・和歌山市議団が何度もとりあげるなか、県と和歌山市に太陽光発電の建設にかかわる条例が今年できました。

 海南市でも山林18ヘクタールを切り開く大型太陽光発電の計画があり、開発地は土砂災害警戒区域や同特別警戒区域、藤白断層帯が含まれる地域です。住民らは土砂災害や日方川の洪水の危険性を指摘するとともに、「情報がちゃんと入っていない人が多い。このまま工事が進んでしまうのではと不安だ」と訴えています。河野敬二党市議(当時、現県議候補)の質問に神出政巳市長は「地域住民、下流住民に十分説明するように指導する」と答弁しました。

 (和歌山県・川崎正純)

栃木 豊かな自然環境壊す 「オール日光」で撤回まで

男体山(奥)をのぞむ横根山(手前)=栃木県日光市

 栃木県日光市と鹿沼市にまたがる前(まえ)日光県立自然公園内の横根山(海抜1373メートル)での大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画をめぐり、事業者と計画の撤回を求める市民らのせめぎあいが続いています。

発電量は同じ

 事業者は今年2月、住民の反対運動に押され、107ヘクタールとしていた当初面積を約半分に縮小することを表明。ところが、発電量は約4万3千キロワットと当初規模のままに据え置きました。豊かな自然環境を壊すことに変わりはありません。

 変更後の建設エリアは、当初計画にあった横根山頂周辺の鹿沼市側約77ヘクタールを除いた日光市側の約60ヘクタールです。

 市中心部から西側にある山間部の旧足尾町地域では、小中学校を含む約424世帯が、横根高原の沢水を飲料水として中央部浄水場から使用しています。住民からは、「水が守れるのか」不安の声が広がっています。

 同計画をめぐり、鹿沼市議会は昨年3月、日光市議会は同年6月、建設反対の陳情をそれぞれ採択。佐藤信鹿沼市長は、計画を「不適」と明言し、日光市も「鹿沼市と同様」との立場を表明していました。

「要綱がない」

 ところが、日光市は、事業者による今回の計画変更を容認。「横根高原の自然を守る日光市民の会」との意見交換(7月23日)で市の担当者は「鹿沼市には事前相談願の要綱があるが、日光市にはないので、法にのっとり手続きをすすめるしかない」と回答しました。

 県は、今年4月施行の「栃木県太陽光発電施設設置・運営等指導指針」で、県立自然公園を「立地を避けるべきエリア」に設定しています。

 市との意見交換会の中で新たな事実が判明しました。

 事業者は、3月に「自然公園普通地域内工作物届書」を提出したものの、書類に不備があり、正式に受理されたのは5月9日でした。つまり、県立自然公園内を「立地を避けるべきエリア」とした県の「指導指針」に引っかかるのです。

 また、メガソーラーを日光市側だけに建設することについて、市が事業者側から事前相談を受けていたことも分かりました。

 市議会に提出された建設反対の陳情に添えた署名は約1万2000人分を超えるものでした。意見交換の席上で「市民の会」の会員は「ダメなものはダメと、鹿沼市のように主張を貫いてほしい」と迫りました。

 「市民の会」の事務局も担う日本共産党の福田道夫市議は「今後、国や県への働きかけと、市長への要望書提出など計画しています。横根高原の自然を守るために、自民党から共産党まで『オール日光』としての運動を広げ、建設撤回まで頑張りたい」と話しています。

(「しんぶん赤旗」2018年8月5日より転載)