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東電刑事裁判 津波対策、先延ばしに異論・・上司から 元社員の供述判明

 東京電力福島第1原発事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の第23回公判が7月27日、東京地裁(永渕健一裁判長)でありました。事故前、出向先の日本原子力発電(原電)で東海第2原発(茨城県)などの津波対策を担当した元東電社員が証言しました。

 元社員は2007年から09年まで原電に出向。証言によると、政府機関が02年に公表した地震予測「長期評価」の見解を反映した大津波への対策を検討。原子炉建屋などが最大85センチ浸水する評価結果を得て、海水ポンプ室の壁のかさ上げや建屋の水密化、盛り土など津波対策が10年までに実施されました。

 元社員は東電など他社と何度も打ち合わせやメールをやりとりしました。当初は東電から「長期評価」を取り入れるべきだとの意見を受け取っていましたが、08年7月末に「長期評価」の採用は「時期尚早」と告げられます。東電は津波対策を先送りしました。

 検察官役の指定弁護士は元社員の供述調書の内容を明かしました。当時、東電の担当者から「柏崎刈羽原発も止まっているのに、福島も止まったら経営的にどうなのか」という話があったことや、東電から示された方針変更を原電社内で説明した際に上司から「先延ばしでいいのか」と意見が出たといいます。

 長期評価は、三陸沖北部から福島県沖を含む房総沖の海溝寄りのどこでも、マグニチュード8クラスの津波地震が今後30年以内に発生する可能性が20%と予測。東電はこれに基づき福島原発に最大15・7メートルの津波が襲来するとする計算結果を得て、津波対策を検討。しかし、08年7月に元副社長の武藤栄被告に報告した際、対策を見送りました。

(「しんぶん赤旗」2018年7月29日より転載)