東京電力の小早川智明社長が、福島第2原発(同県楢葉町、富岡町)の4基について廃炉の方向で検討すると表明しました。東日本大震災で重大な事故を起こした東電福島第1原発(同県大熊町、双葉町)の6基の廃炉はすでに決まっており、県内の原発がすべて廃炉に向かうことになります。県民が受けた莫大(ばくだい)な被害からすればあまりに遅すぎる表明ですが、原発はいらないという県民世論に東電が追い詰められた結果です。大震災後も再稼働に固執し続けた東電と安倍晋三政権のやり方の破たんは明白です。再稼働路線からきっぱりと決別すべき時です。
県民世論が追い込んだ
東電福島第1原発の建設から約50年―。第1原発と第2原発の計10基の原子炉が太平洋側の浜通りにつくられてきた福島が「原発ゼロ」に向けて踏み出すことになります。これは県民の悲願です。
原発事故後、福島県と県内全59市町村議会が決議をあげて、東電と政府にたいしすべての原発の廃炉をねばり強く要請してきました。長年にわたって「県民の総意」を無視して、第2原発の再稼働を企ててきた東電と政府の姿勢はきわめて重大です。
第1原発の深刻な事故は7年余たっても県民に大きな苦難を強い続けています。県の発表でも5万人近くがいまも避難生活を余儀なくされ、被災者は事故前と同様の暮らしと生業(なりわい)を取り戻すことができません。一人ひとりの生活再建はきわめて厳しい状況にあります。
東日本大震災では、第2原発も電源を喪失し炉心溶融の危機までいきましたが、唯一残った外部電源でかろうじて重大事故を免れました。「原発がある以上、帰りたくても帰れない」という住民の声にみられるように、第2原発の存在が復興の重大な障害になっていたことは明白です。
東電社長は廃炉の理由について「これ以上、あいまいな状況を続けるのは復興の足かせになる」と今ごろになってのべましたが、あまりに無責任です。原発再稼働にこだわり復興を妨げてきた姿勢を反省し、福島の復興と被災者への補償の責任を果たすべきです。
第1原発では溶け落ちた核燃料の状況もまだ把握されず、廃炉作業はまだ出発点に立ったとも言えない状況です。大量の汚染水の処理も先が見えません。それに加えて、第2原発とあわせて10基の廃炉は長期におよびます。東電はその作業に全力を集中することが必要です。
福島の全原発廃炉の方向を決めたことで、東電は残る柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を加速させようとしています。それこそ新潟県民の声に反する民意無視に他なりません。福島事故に無反省な東電に再稼働をする資格はありません。再稼働は断念すべきです。
エネ基本計画案を見直せ
安倍政権は原発を「重要なベースロード(基幹)電源」と位置づける「第5次エネルギー基本計画」を近く決定しようとしています。計画案は2030年度の全電源に占める原発の比率を現在の約2%から「20~22%」に引き上げるとしており、柏崎刈羽原発など30基もの再稼働が大前提になっています。「原発ゼロ」を求める国民世論に真っ向から逆う再稼働推進の計画案は根本から見直すことが求められます。
(「しんぶん赤旗」2018年6月18日より転載)