日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 火山と原発㊤ 規制委「基本的考え方」文書・・巨大噴火リスク無視/立地評価の規定を“死文化”

火山と原発㊤ 規制委「基本的考え方」文書・・巨大噴火リスク無視/立地評価の規定を“死文化”

 原子力規制委員会が原発の審査で使う「火山影響評価ガイド」(火山ガイド)に関連して、同委員会が今年になって、巨大噴火に関する・「基本的考え方」という文書をまとめたことに対し、火山ガイドの立地評価の規定を事実上「死文化」させるものだなどの批判が市民や専門家から高まっています。

(松沼環)

四国電力が廃炉を決めた伊方原発1号機(右端)と2号機(その左)、広島高裁が運転差し止めを命じた3号機(左端)=愛媛県伊方町

 原発の審査では、火山影響を評価する場合、第1段階として火山ガイドに基づいて立地が不適かどうかの評価を行います。設計で対応が不可能な火砕流や溶岩流などが原発の運用期間中(核燃料が所内にある期間)に「影響を及ぼす可能性が十分小さい」といえるかを検討し、いえない場合は、「立地不適」となります。

 カルデラをつくるような巨大噴火では、火砕流の被害が広域に及び、国内最大とされる約9万年前の阿蘇山の噴火では160キロメートルに到達しています。

 昨年12月、広島高裁は、四国電力伊方原発3号機について火山ガイドを厳格に適用した決定を出しました。約130キロ離れた阿蘇山の過去の噴火で火砕流が「到運した可能性が十分小さいと評価することはできない」ことから「原発を立地することは認められない」と判断し、今年9月末までの運転差し止めを命じました。

運転差し止め後に

 「考え方」が作られたのは、今年(2018年)2月21日に規制委の更田(ふけた)豊志委員長の指示によるものです。

 同じ日の国会の参院委員会では、自民党の青山繁晴議員が、更田氏に対し、広島高裁決定を取り上げて「今後の司法のリスクを考えて」火山噴火に関する基準の見直しを求めました。

 「考え方」は、原子力規制以外で巨大噴火を想定した法規制や防災対策が行われていないことを理由に「巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準」などと主張。このことから、巨大噴火が差し迫った状態でないと確認され、原発の運用期間中に巨大噴火が発生する「科学的に合理性のある具体的な根拠があるとはいえない場合」、「『巨大噴火の可能性が十分に小さい』と判断できる」と結論付けています。

 要するに巨大噴火のリスクを無視してもいいという内容です。しかも、「科学的に合理性のある具体的な根拠」を示すのは誰か。事業者自ら、自分たちの原発が立地不適になるかもしれないデータを積極的に集め、規制委に示すことが期待できるでしょうか。同じ原発の審査でも断層評価については、活断層でないことの証明を事業者に求めているのとは対照的です。

 「考え方」が示された際、規制委の委員からも「事業者側が積極的にデータを集めようとするインセンティブ(誘因)が働かなくなるのでは」(伴信彦委員)と懸念が示されています。

安全観念に従って

 更田氏は、「考え方」について会見で問われ「非常に発生頻度が低いと思われるような事象は(安全を考える上で)判断から除くという考えがある。統計分布のすそ切りみたいなもの」と述べています。

 「考え方」の巨大噴火の規模は、噴出物の量が数十立方キロメートル程度を超えるような噴火です。日本列島で該当する規模の噴火は、12万年前以降18回、約6700年間隔で起きています。

 元米ゼネラル・エレクトリック技術者で、原子力コンサルタントの佐藤暁氏は「原子力の安全観念では、国際的にはすそ切りの基準は1000万年に1回で、これはIAEA(国際原子力機関)の基準などにも書かれていることです。日本でも航空機落下の確率が1000万年に1回以上と評価されれば対策が必要と判断されます。また、予測が難しいものについては履歴を使い、例えば、1万年前に起きたことは、1万年以内に1回は起こるとみなすのです。すそ切りしたいのなら、社会通念ではなく原子力の安全観念に従って、1000万年に1回も起こりませんと示さないといけません」と批判します。

(つづく)

(「しんぶん赤旗」2018年6月18日より転載)