日立製作所が英国ですすめる原発建設計画について、同社と英国政府は交渉を本格化することで合意しました。巨額の費用負担をめぐり協議の難航も指摘されるなか、原発輸出を「国策」としてすすめる安倍晋三政権はこの合意を「大いに歓迎したい」(世耕弘成経済産業相)として、公的金融機関による支援の検討を議論するとしています。東京電力福島第1原発事故に無反省のまま、国内での原発再稼働と一体で他国にまで原発を売り込む姿勢は異常です。再稼働をやめるとともに、原発輸出からきっぱり手を引くべきです。
国民につけ回しの危険
日立は5年前に買収した英原発子会社を通じ、同国中西部のアングルシー島に2基の原発を建設する計画です。2019年に着工の可否を最終判断、20年代前半に運転開始したいとしています。しかし、福島第1原発事故の後、世界中で原発の安全基準が厳しくなり対策費が急上昇したことで、事業費が3兆円規模と当初より膨れあがったため、費用をどこが負担するか問題になっています。
自社のリスクを回避したい日立は日英政府に支援を求めています。総事業費のうち、英国政府が約2兆円を日立に融資し、残りの約1兆円を日立、日本の政府系金融機関、英国の政府・企業の3者で出資する案が検討されています。中西宏明日立会長(経団連会長)は「政府がコミット(関与)しないとできない。それが日英政府とわれわれの共通の理解だ」と官民一体が前提とダメ押ししています。
世耕経産相は協議本格化の合意を受け、さっそく日本側の支援として日本政策投資銀行や国際協力銀行、さらに経産省所管の日本貿易保険による保証が想定されると述べました。いずれも政府が全額出資する金融機関です。政府保証をおこなった巨大プロジェクトが行き詰まれば、つけは国民に回ります。民間単独では成り立たない高コストの原発建設を、日英の国民に負担をもたらす枠組みで推進することは大問題です。計画撤回こそ必要です。
安倍政権は原発の輸出を「成長戦略」の柱に位置づけ、首相自らトップセールスで各国に働きかけてきましたが、次々と頓挫しているのが実態です。
安倍首相が直接トルコ政府に働きかけた三菱重工業、伊藤忠商事などによる4基の新設計画は、地震対策コストがかさみ事業費が5兆円規模に倍増しました。伊藤忠が計画から離脱する見通しで、建設期間を延長せざるを得なくなっています。東芝は米国の4基の建設計画で1兆円を超える巨額損失をだし、傘下の原発企業が経営破たん、建設断念に追い込まれました。ベトナムでは計画中止、リトアニアでも行き詰まっています。
だいたい福島原発事故を起こした日本の政府が原発輸出を「成長戦略」の柱にすえること自体、間違っています。
原発ゼロへの転換こそ
英国の原発建設予定地の住民団体が5月末に来日し、公的支援反対の署名を経産省に提出するとともに、日立本社に建設中止を訴えました。住民の声に反する原発輸出の道理のなさは明らかです。
原発の再稼働にも輸出にも終止符を打ち、原発ゼロ、再生可能エネルギーを拡大する政治への転換こそ求められます。
(「しんぶん赤旗」2018年6月10日より転載)