東京電力福島第1原発事故発生から3年近く。東電任せでコスト優先のお粗末な対策しか取らなかった結果、次つぎと事故やトラブルに見舞われ、汚染水漏れも続いています。海洋への流出も確認されています。「国が前面に」と言った政府も抜本的対策を打てないでいます。(神田康子)
今年(2013年)6月、1、2号機間の海側の地下水から高い濃度の放射性物質が検出され、東電は7月下旬、汚染された地下水が海へ流出していることを初めて認めました。少なくとも1日300トンが流出しています。護岸で水をせき止める工事を始めたものの、海水の放射性物質の濃度は依然、下がっていません。
汚染源と推測されるのが、タービン建屋の海側の地下トンネル(トレンチ)です。ここは2011年4月、タービン建屋から流れ込んだ高濃度汚染水がトレンチを通して2号機取水口付近から海へ大量に漏えいした場所です。東電は、トレンチの出口をコンクリートでふさぐだけで、中にたまっている汚染水を放置していました。
汚染水については、タービン建屋から汚染水が直接漏えいし、海に流出している可能性もあります。さらに12月に入って、海側の深い井戸の地下水からも放射性物質が検出され、汚染が地下深くまで広がっている可能性があることが分かりました。
汚染水をためるタンク問題も深刻さを増しています。
今年8月には300トンの高濃度放射能汚染水がタンクから漏れていたことが発覚。漏れたタンクをはじめ、敷地内に設置された約1000基のタンクは鋼板をボルトで締める簡易なタイプが中心。漏えいの危険がより小さい溶接型は設置に時間と費用がかかるためほとんど造られていませんでした。
その後も、別のタンクからの汚染水漏れもわかりました。大雨のたびにタンク周りの堰(せき)から放射性物質に汚染された水があふれる事故も相次ぎました。
12月に入っても、タンク周りの堰から汚染水の漏えい事故が相次ぎました。堰の構造的な問題が指摘されています。海側の地下水では、放射性物質の濃度が最高値を更新しました。福島第1原発の状況を監視している原子力規制委員会の対応も後手後手。東電任せで、さまざま指摘された問題も放置するなど、問題だらけでした。
日本共産党は11月に「汚染水問題シンポジウム」を開きました。汚染水問題の解決に向けて、原発に対する立場の違いをこえ、多くの英知を結集することが求められています。
福島第1原発 2013年の汚染水にかかわる主な出来事
4月6日 地下貯水槽で汚染水漏れが発覚。
6月19日 海側観測孔で高い濃度のストロンチウム90、トリチウムを検出。
7月22日 汚染水が海へ流れ出していることを東電が認める。政府は少なくとも1日300トンが流出していると推定。
8月19日 汚染水タンクからの水漏れ。推定300トン。
9月16日 台風で汚染水タンク周りの堰にたまった水1130トンを堰外へ放出。一部では堰からあふれました。<
10月2日 傾いたタンクに容量を超えた汚染水を注ぎ、漏えい。
12月21、22日 汚染水タンク周りの堰から3.4トンが漏れる。