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エネルギー基本計画見直し・・専門家に聞く

  •  安倍政権は2030年を見据えたエネルギー政策の方向性を示す「第5次エネルギー基本計画」を、今夏にも閣議決定しようとしています。5月16日に示された計画案は、電力量に占める原発の割合を30年度に20~22%にするなどとして、原発に固執。また有識者会議「エネルギー情勢懇談会」の50年に向けた提言も反映され、再生可能エネルギーの自立した「主力電源化」をめざすとしています。どう見るか、専門家に聞きました。        (岡本あゆ)
  • 将来像を描けない経産省
  • 関西電力大飯原発3、4号機(右から)=福井県おおい町(2013年7月27日撮影)

     WWF(世界自然保護基金)ジャパンの山岸尚之気候変動・エネルギーグループ長は、「あくまで脇役とされてきた再生可能エネルギーに『主力電源』という言葉が使われたのは評価すべき。小さな一歩だが”霞が関文学”では大きなことでは」と話します。

  •  一方で、基本計画に基づいて2015年に政府が決定したエネルギーミックス(電源構成)は見直されず、原発は50年に向けていまだに「脱炭素化の選択肢」と位置づけられています。
  •  山岸氏は「再生可能エネルギーの発電量が、すでに全電源の15%に届く中、30年までに22~24%という現在の政府の目標は低い。主力なら数字に反映すべきだ」と指摘します。
  •  「原発についても、非現実的な数字が見直されていない。新増設か運転延長しなければ、20~22%数字は達成できない」
  •  石炭火力発電の問題でも、C02の排出量規制や炭素税などの規制には言及しない一方、いまだに高効率な石炭を使えばいいというニュアンスが残ります。山岸氏は「今歯止めをしないと手遅れになるという問題意識が感じられない」と語ります。
  •  市場が不確実に
  •  さらにエネルギー情勢懇談会の提言は、50年の状況について、再生可能エネルギーや水素、原発などの「技術間競争の帰すうは不透明」と主張。特定の選択肢への偏りを避け、「決め打ちし」ないとする方針を強調しています。
  • 再エネ費用あえて高く試算
  • 洋上風力発電=茨城県神栖市

     山岸氏は「未来は不確実だから、リスクを避けるために方向性を出さないというのが、経産省の理屈だろう。だが“どちらともとれません”としてしまうと、投資家や企業は、再生可能エネルギー・省エネルギーに投資しにくくなる」と危ぐします。

  •  再生可能エネルギーの普及が進む欧米諸国では、国や自治体が明確な方針を打ち出したことが、再生可能エネルギー市場への投資を促した背景があります。
  •  山岸氏は「国が再生可能エネルギー主力化にかじを切ると明確にした方が、市場の不確実性は減る。判断せずにいると、逆にますます不確実性が増す。決断しないことが責任ある立場というのは違うのでは」と疑問を呈します。
  •  科学的ではない
  •  京都大学大学院の安田陽特任教授(工学)は、再生可能エネルギーのコストについて、提言があえて高く見積もっているのではないかと指摘します。
  • 国民の声聞かない策定過程
  • 太陽光発電

     「提言は『科学的レビューメカニズム』の政策が必要とうたっている。科学的レビューメカニズムとはさまざまな学術論文を評価し、学術的な成果を尊重して、客観性・透明性をもって政策を決めるという理念。ところが肝心の懇談会の資料に、学術論文に基づいたものがほとんどない」

 懇談会の提言は再生可能エネルギーのコストを最大で90円超と試算しています。発電コストが20円、出力抑制コストが20円、蓄電池が55円、キロワット時あたり合計95円との内訳です。

  •  安田氏は「この試算には無理がある。再生可能エネルギーに蓄電池や水素が必要という主張は、国際的な議論から大きくかけ離れている。かなり特殊な状況で使うものを、なければ実現できないかのような論法で、再生可能エネルギーのコストを不必要に高く見積もっている。試算を裏付ける学術論文もなく、科学的な議論と言えない」と話します。
  •  国際機関IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の温暖化リポートは、科学的レビューメカニズムの手法に基づき、1000件に及ぶ学術論文を参考文献として引用しています。
  •  安田氏は「懇談会の試算は引用文献もなく、科学的レビューメカニズムをうたっている分だけ悪質だ」と批判します。
  •  意見聴取会なし
  •  国際環境団体FOE Japanの吉田明子理事は基本計画策定のプロセス(過程)についても問題視します。
  •  「12年の民主党政権下では、福島を含む全国10力所での意見聴取会や世論調査が行われた。その前の10年の自民党政権下でも、意見聴取会は開かれていた」
  •  しかし今回は、その意見聴取会さえ行われておらず、パブリックコメント(意見募集)のみ。環境団体からは意見聴取会の実施を申し入れる声が相次ぎましたが、経産省は「今のところ予定はない」としています。
  •  吉田氏は「非常に後退したと思う。策定にあたって国民の意見を聞く姿勢が欠けている」と話します。
  •  「エネルギー計画はすべての電力・エネルギー政策の基礎となる、私たちの生活に大きく関わるもの。それを、広い国民の意見を聞かないプロセスで決めるのは、非常に問題だ」
  • (「しんぶん赤旗」2018年5月21日より転載)