旧経営陣公判
東京電力福島第1原発事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人
の公判が4月10、11の両日、東京地裁(永渕健一裁判長)でありました。両日とも同社で事故前に津波対策を担った社員が出廷しました。
社員は、事故の3年前に原発の敷地を大きく超える津波が襲来する可能性を元副社長の武藤栄被告(67)に報告した際、「対策を保留するとの結論が示され、力が抜けた」と証言しました。
東電は2008年1月、政府の地震調査研究推進本部が02年に公表した地震予測「長期評価」に基づいた分析を子会社に依頼。同年3月に、最大15・7メートルの津波が襲来する可能性があるとの結果を得ました。
出廷した社員は土木調査グループに所属。社員らは同年6月、原子力立地副本部長だった武藤元副社長に報告した際、防潮堤設置に必要な許認可を調べるよう指示を受けて検討を続けていました。しかし、同年7月の会議で武藤副社長から研究を継続するとされ、社員は「予想していなかった結論で力が抜けた」と述べました。
社員はその後、その変更方針を電力各社でつくる電気事業連合会の委員会や福島第1原発での会議で説明。しかし、政府機関の「長期評価」の見解を否定することが難しいことや「津波対策は不可避」などと社内に報告していたことも明かしました。
社員は、「長期評価」の見解は否定できないと、10年に同原発の津波対策を検討する作業グループを作りますが、対策を実施するには至りませんでした。また、事故の4日前の11年3月7日、旧原子力安全・保安院に最大15・7メートルの高さの津波が襲来する恐れがあるとする計算結果などを説明した際、「きびしめの口調」で指示がありうるとの回答を得たため、その内容を武藤副社長にメールで伝えたことも証言しました。
武藤氏ら3被告は、「長期評価」に基づく計算結果は「試行的な計算で、対策を取っても事故は防げなかった」として、無罪を主張しています。
(「しんぶん赤旗」2018年4月12日より転載)