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エネルギー減らし“成長を”・・あと30年でCO2排出できない時代がくる/地球環境戦略研究機関(IGES)研究顧問・西岡秀三さんに聞く

気候変動

14-01-06gurafu 人間活動が温暖化の主因である可能性は「95%以上」で、その影響がすでに各方面に現れている・・。世界の科学の英知を集めた政府間機構である「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は昨年(2013年)から今年にかけ、最新報告の発表を順次行います。温暖化と社会のあり方について地球環境戦略研究機関(IGES)研究顧問の西岡秀三さん(環境システム学)に間きました。
(君塚陽子)

・・2013年9月、7年ぶりにIPCC報告(科学的知見=第1作業部会)が出されました。

最新の観測データや気候モデルで温暖化の進行が確かめられました。さらに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスが主因であることの確信度も上がりました。

私がいつも強調するのは、「安定した気候」は水や土地、海洋、生態系など″自然環境資源の母″だということです。人類は1万年以上のあいだ、それなりに安定した気候のもとで、今の文明を築いてきました。

元に戻らない

「気候変動」とは、この自然環境のありさまが一気に元に戻らない状態になってしまう深刻な問題です。

報告書は、気温上昇を2度未満に抑えるためには、CO2の累積排出量を約8000億トン(炭素換算)に抑える必要があるとしました。すでに約5300億トン排出しており、残りは約2700億トン。現在、毎年約100億トン排出しています。つまりあと約30年で余地がなくなります。C02を出してはならない時代がくるということです。

・・それが「低炭素社会」ですね?

化石燃料を使って発展してきたエネルギー高依存社会がやり直しを迫られています。

省エネ社会へ

「低炭素社会」への道筋を私たちは研究し、ほかにも多くの研究があります。おおざっぱにいえば、省エネルギーで需要を半分にし、それを再生可能エネルギーでまかなうといったイメージです。

そのためには、産業や都市のあり方、住宅、交通・・たとえば、自動車と地下鉄で1人当たりのCO2排出量は10倍も違う・・など、排出ゼロの社会に向かってシステム全体を見直すことが欠かせません。ドイツをはじめ、ヨーロッパはその方向に向かっています。

一部から「エネルギーなくして経済成長なし」などの声が聞こえますが、そんな時代ではありません。エネルギーを減らしながら″成長″することに知恵を絞る時代です。1970年代、日本は石油ショックに見舞われ、石油依存を見直し、技術革新を進めました。覚悟を決めた新たな挑戦が結果を生むのです。

異常気象が相次いだ昨年。台風の襲来で破壊されたフィリピン・タクロバンの町=2013年11月19日(松本眞志撮影)
異常気象が相次いだ昨年。台風の襲来で破壊されたフィリピン・タクロバンの町=2013年11月19日(松本眞志撮影)

破たんした原発頼み

・・政府は「原発が止まって温暖化対策が後退した」と言いますが。

むしろ、過度の原子力頼みのエネルギー政策は3・11で破綻し、しかも結果として温暖化対策も破綻しました。

出力調整不可

「原発が動いていない」という前提で政府が世界に示した新たな削減目標は20年までに05年比3・8%滅。1人当たりの排出量が将来に向かって増える計算で、ほかの国が減らそうというときに、ありえないことです。

これまで原発は温暖化対策の切り札と言われてきました。発電の際、CO2を出さないからです。しかし、原発は出力が調整できないため、日本では石炭火力発電所と組み合わせて使いました。そのため、石炭火発由来のCO2が増え、結果的には、原発とともにCO2も増えました。(グラフ)

しかも、原子力に頼りすぎ、再生可能エネルギー推進にはきわめて消極的でした。ドイツではいま、再生可能エネルギーが発電量の20%ぐらいに育っていますが、日本は大規模水力を除けば1%程度。本来は、ドイツのように育つ可能性は十分あったのです。

もし仮に原発を再稼働し、また何かあったら、日本の低炭素計画はまた大きく狂うとになります。そんなことは避けなければなりません。

先進国として模範を示して IPCC第1作業部会共同議長、トーマス・ストッカーさん(スイスベルン大学教授)の話

科学者という前に、温暖化に懸念を持つ一人の市民として、日本が目標を下方修正したことにがっかりさせられました。教育水準も高い先進国として日本は世界をリードし、模範を示してほしい。

排出削減は今の政府の任期内にはとどまらない長期的なビジョンに基づくことが求められます。産業構造やインフラの転換、エネルギー生産の仕方を変える必要があります。再生可能エネルギーは中央でつくって分配するのでなく、地方にこそポテンシャルがあるからです。
(12月4日IGES主催のセミナーで)

 

地球環境戦略研究機関(IGES)研究顧問 西岡秀三さん

にしおか・しゅうぞう=1939年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科卒、同博士課程修了。工学博士。元国立環境研究所理事。88年からIPCC作業に参加。著書に『低炭素社会のデザイン─ゼロ排出は可能か』ほか多数

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