東京電力福島第1原発はこの1年間で、ようやく溶け落ちた核燃料とみられる物体が見つかり、核燃料プールから燃料の取り出しに向けた準備も進んでいます。構内では、高線量の中で険しく先の見えない事故収束作業が続きます。事故から7年になるのを前に、現場を取材しました。
(唐沢俊治)
ドーム屋根設置
1~4号機建屋など構内を一望できる高台に登りました。1年間で最も変化したのは、3号機原子炉建屋の上部。核燃料プールから燃料を取り出すため、かまぼこ型のドーム屋根の設置が進んでいます。高台からは、内部にクレーンや作業員らが見えました。
原子炉建屋の上部は大きく変化した一方で、建屋側面は津波と爆発による損傷が、ほぼ事故当時のまま残っていました。
3号機の最上階の放射線量は事故直後、最大で1時間当たり約2シーベルト。数時間いただけで死に至り、作業員の被ばく限度(年間50ミリシーベルト)に1分半程度で到達する高線量でした。がれき撤去や除染、遮蔽体の設置などで、現在、ドーム屋根内では1時間当たり1ミリシーベルト以下まで下がりました。
それでも、作業は1日1~2時間程度に限定。今回、ドーム屋根に入るだけで、取材の被ばく上限に達する恐れがあり、取材コースからは外されました。
建屋から約80メートルの高台に十数分間の滞在中、線量計が「ピーピッピッピッ」と鳴りました。東電から渡された線量計は、積算0・02ミリシーベルトでアラームが鳴る設定。構内を移動し始めてから約45分後のことでした。
1号機原子炉建屋は事故で爆発し、現在も最上階部分には曲がった鉄骨が残っています。1月22日から、最上階のがれき撤去を開始。がれき吸引機をつるす大型クレーンが見えました。
2号機は1月19日の原子炉格納容器内部調査で、底部に燃料集合体の部品が落下しその周囲にデブリ(溶け落ちた核燃料)とみられる堆積物が見つかりました。
爆発で損傷し無残な姿をさらす1、3号機と異なり、2号機原子炉建屋は一見、健全のように見えます。しかし、東電は「爆発を免れた半面、中の汚染はひどい状態」といいます。建屋内を調査する準備をしています。
作業環境の境目
「ここがイエローゾーンとグリーンゾーンの境界です」。東電の担当者が言いました。
1号機原子炉建屋の北西約80メートルの地点。防じんマスク、手袋など比較的軽装で作業できる「グリーンゾーン」は現在、全体の約95%の面積に広がりました。この地点も昨年秋に「グリーンゾーン」に変更されたばかり。
しかし一歩進めば「イエローゾーン」。防護服などの装備で固めた作業員がすぐ目の前を横切りました。目には見えないはずの“放射線の境界線”を見たような気がしました。
構内は専用のバスで移動。至る所で放射能汚染水をためているタンク群が見えました。
2、3号機建屋の間を走行した時、付近では放射線量は1時間当たり200~300マイクロシーベルト。3号機側に線量計を向けた東電職員は「250、260…」と読み上げました。取材の最高値でした。
(「しんぶん赤旗」2018年2月1日より転載)