原子力規制委員会は11月29日、火山噴火による原発などへの影響について、想定される堆積量をもとに推定した大気中の火山灰濃度に対し、24時間対応できるよう事業者に求める規則等を改定しました。
原子力規制庁の試算によれば、新規制基準に適合しているとされた原発で考慮されてきた火山灰濃度の数十~数百倍高い濃度になる可能性があります。
施行は来月とみられる公布日ですが、新規制基準での保安規定変更をすでに認可された原発は、来年12月31日まで猶予されます。
噴火による降灰の影響は、停電や非常用ディーゼル発電機のフィルターの目詰まりなどの影響が懸念され、電力はフィルター交換などの対策を示しています。
改定は、施設ごとに想定されている火山灰堆積量をもとに、シミュレーションなどから大気中濃度を推定。その中で2系統のディーゼル発電機の機能を24時間、維持するよう求めています。規制庁が15センチ程度の火山灰堆積量を想定した試算では、1立方メートル当たり数グラム程度で、これまで考慮されてきた同0・033グラムの濃度より数十倍以上高い結果が得られています。
また、重大事故対策として、フィルターの目詰まりを原因とする全交流電源喪失を想定し、降灰による作業環境の悪化を考慮した炉心損傷防止も要求します。
解説
大気中の火山灰濃度は観測記録を含め十分な知見がないと指摘されます。そのため、規制委はその影響について、これまでより不確かさを考慮した評価を要求することになります。
規制委が当初の審査で参照していた大気中の火山灰濃度の観測記録より高い濃度の記録が、米セントヘレンズ火山噴火で135キロの地点で観測されていると昨年、意見募集の際に指摘されました。規制委は一部の原発で再度評価を求めました。
さらに、電力中央研究所が、富士山宝永噴火のシミュレーション結果として、セントヘレンズ火山噴火の観測記録よりかなり高い濃度を公表し、検討が必要とされていました。
今回改定された評価ガイドの手法で規制庁が行った試算で、セントヘレンズ火山の観測値を大幅に上回ることから、これまでの審査の影響評価が甘い前提だったことが示されました。
一方、濃度の推定には、原発ごとに想定されている火山灰堆積量を使います。例えば、九州電力川内原発では九電が15センチと評価していますが、専門家から過小評価だと指摘されています。しかし、規制委は堆積量について見直す必要がないとしています。
さらに、フィルターの性能評価などがすでに電力会社任せになっています。対策の有効性などは今後審査で確認するとしていますが、評価の信頼性が問われます。(松沼環)
(「しんぶん赤旗」2017年11月30日より転載)