東京電力福島第1原発事故による被害の賠償と回復の課題について日本弁護士連合会は12月2日、東京都内でシンポジウムを開きました。共催は日本環境会議。約250人が参加しました。
小野寺友宏・日弁連副会長は「福島原発事故から6年過ぎ、避難揖ボの解除が進んでいるが、帰還は進んでいない。被害はまだまだ継続している」と述べ、被害の回復を検討し課題を議論する機会にしたいとあいさつ。
シンポでは、前橋、十葉、福島の各地裁で今年出された集団訴訟の判決の評価や、2万件を超える申し立てがされている原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)の状況が報告されました。
吉村良丁立命館大学教授は、三つの判決を検討。いずれの判決も原子力損害賠償紛争審査会の指針の額を超える賠償を認めたと述べ、「指針の見直しやそれを前提にした救済制度の再構築を検討する段階にきているのではないか」と強調しました。
除本理史・大阪市立大学教授は、福島原発事故の被害の特性について報告しました。避難元地域の生産・生活の諸条件の一切の喪失が「ふるさと喪失」被害だとして、除染などの原状回復措置や財物の賠償、「ふるさと喪失」の慰謝料の賠償がいずれも必要だと指摘。避難指示解除や住民帰還が進んでも地域の様相が変ぼうし、「ふるさとの喪失」はなくならず、「賠償のあり方を見直す必要がある」と述べました。
このほか、ADRの現状についての報告では、東京電力が和解案を拒否する例が増えており、ADRの機能不全を招くことや、和解案を尊重すると約束した巣電の「特別事業計画」に真っ向から反すると指摘がありました。
(しんぶん赤旗)2017年12月3日より転載)