東京電力福島第1原発事故で福島県や隣接県から避難した住民らが国と東電に対し、原状回復などを求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の判決が10月10日、福島地裁で出されます。
全国最多の原告団
全国で30近くある同種の集団訴訟で、同訴訟は最も多い原告団(提訴時3864人)で、福島県の全市町村に原告がいます。
3月の前橋地裁、9月の千葉地裁に続く3件目の判決となり、今後予定される判決や国の原発政策に影響を与えると思われます。
千葉地裁判決は国の責任を認めませんでした。前橋地裁判決は国と東電の責任を認めた一方で、損害賠償については極めて低額に抑えられました。国が一方的に定めた、原子力損害賠償紛争審査会の「中間指針」の基準に縛られたからです。
福島地裁で、これらの弱点を乗り越えた判断が出されるか、千葉地裁で認められた「ふるさと喪失慰謝料」についても、より明確に認められるかも注目されます。
主な争点は①巨大津波の予見可能性②結果を回避できたか③賠償の妥当性です。
原告側は、国の機関が公表した「長期評価」で福島県沖を含む日本海溝寄りのどこでも津波地震が発生し得るとした2002年、遅くとも06年までに、福島第1原発の敷地の高さを超える津波の到来を予見できたと主張。建屋への浸水防止対策などで結果を回避できたとしています。
被告国・東電は、「長期評価」は確立した知見とは言えないと反論。当時は規制権限がなく、仮にあっても事故は防げなかったと主張しています。
また原告側は「被ばくの不安にさらされず平穏に生活をする権利」に基づき、原状回復(空間放射線量が事故前と同じ毎時0・04マイクロシーベルト以下の状態)を求めて、回復されるまで月額5万5000円の慰謝料の支払いを請求。うち約40人は「ふるさと喪失慰謝料」(1人2000万円)を求めています。
原告団と弁護団は全面解決に向けて次の四つを目指しています。
①国と東電の重い過失責任を明らかにして全ての被害者への真摯(しんし)な謝罪②強制避難、区域外自主避難、滞在者など全ての被害者に対して、被害の実態に応じた賠償の実現③生活と生業の再建と健康を守る施策の実施④原発の稼働停止と廃炉です。
中島孝原告団長は「県内滞在者も県外避難者も黙ってしまったらだめだと立ち上がりました。二度と原発事故は起こさせないという思いで4年半団結してたたかってきました。必ず政府に国民の意思を分からせる」と語っています。(菅野尚夫)
(「しんぶん赤旗」2017年10月9日より転載)