紛争つづくウクライナ
1986年にチェルノブイリ原発事故が起きたウクライナで、政府と親ロシア派の戦闘が始まった2014年以降、原子力発電への依存度が高まり、今年は電力の60%超を賄う事態となっています。ウクライナは石炭が豊富ですが、主な産地は親口派武装勢力が支配する東部にあり、調達は困難。ポロシェンコ政権は原発依存を続ける構えですが、NGOは原発の老朽化を懸念します。
国際原子力機関(IAEA)によると、紛争が起きる前の13年、ウクライナの原発依存度は約44%でしたが、16年には約52%に上昇。フランス(約72%)、スロバキア(約54%)に次ぐ原発依存国になりました。政府軍と親口派との散発的な戦闘が続く中、ウクライナのナサリクエネルギー・石炭産業相は今年2月、原発依存度が62%に達したと明らかにしました。
政権が物流遮断
ナサリク氏は石炭調達が不安定な中、原発活用こそが「電力供給安定に資する」と強調。ポロシェンコ大統領も2月、「ウクライナにはもはや何百万トンもの石炭は必要ない」と述べ、原発依存を進める考えを表明しました。政権は3月に親口派地域との物流遮断を決め、石炭調達はさらに難しくなりました。
ウクライナには現在15基の原子炉があり、その大半が1970~80年代に稼働を開始。中東欧における公共投資などを監視するNGO「CEEバンクウオッチ」。(CEEBW)によれば、うち12基が2020年までに耐用年数が切れます。
しかし、ウクライナ政府は「全原子炉について、終了期限を少なくとも10年延長することを決めた」(CEEBW)もようです。それでなくても、既に耐用年数が切れた原子炉も引き続き稼働させているのが現状。CEEBWは「必要な安全性向上や適正なリスク評価が行われずに延長された」と批判しています。
代替エネ資金を
紛争以降、欧州連合(EU)はウクライナ支援を続けていますが、CEEBWは支援の結果、原発依存路線が強まっていると指摘。「欧州は代替エネルギー源への資金提供などを行う必要がある」と訴えています。 (キエフ=時事)
(「しんぶん」赤旗2017年5月23日より転載)