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検証 原発避難計画 伊方・・事故で孤立 半島住民

14-01-22ikata 四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)は、東から西にのびる日本一細長い佐田岬半島の根元に位置します。半島を走る国道197号には北の瀬戸内海、南の宇和海が同時に目に入るポイントもあるほど細い半島です。

中央構造線

原発の北の沖合約6キロには、日本最大級の断層である中央構造編が走っています。

伊方町の橋本泰彦危機管理室長は「事故が起きた場合、発電所の西側の住民が孤立する可能性が考えられ悩ましい」と話します。

愛媛県と伊方町の避難計画は原発より西側の住民5000人について、陸路で原発の横を通り同町より東に位置する愛媛県松前町に避難するコースと、船舶で大分県に避難するコースを示しています。

半島の先端に近い三崎港でみやげ物店を営む池田豊実さん(68)は「津波が来たら船は無理。陸路で放射能を出している原発の方に向かい、その横を通るのはありえない。逃げ道はない。大事故が起きたらみんなで死ぬしかないと、近所の人といってるよ」と真顔で話します。

孤立の問題は離島も同様です。原発から南の沖合にある約280人が暮らす大島(八幡浜市)。市は、孤立を前提に、廃校の校舎に放射性物質を除去するためのフィルター付き換気施設を設置し待機所とするシナリオも進めています。

避難対象となる原発30キロ圏内の住民は約13万人。避難計画の策定が必要な7市町(伊方町、八幡浜市、大洲市、西予市、宇和島市、伊予市、内子町)と愛媛県は策定済みですが、課題は山積です。

風向きで変わる放射能の流れに対応し、どう被ばくを避けるか。

7市町からの避難者を受け入れる自治体のほとんどは避難自治体の東方向にあり、西風が吹けば避難時の被ばくは避けられません。八幡浜市は全避難者が松山市に避難する計画ですが、風向きによっては南方向へ避難するシナリオも持っていますが、具体的な避難先候補はありません。

愛媛県の災害担当者は「通常の災害なら持ちつ持たれつ。原子力災害は立地関係自治体が避難し、受け入れる側は受け入れるだけ。『よろしく』『わかりました』とはいかない」と指摘します。

要援護者は

日本一細長い愛媛県佐田半島の根元に位置する四国電力伊方原発
日本一細長い愛媛県佐田半島の根元に位置する四国電力伊方原発

入院患者、介護が必要な人など要援護者の受け入れ先は一切決まっていません。

伊方町三崎の高台に立ち46人の高齢者が入所する特養老人ホームとグループホームの併用施設「三崎つわぶき荘」の渡辺太志施設長は「受け入れ先も決まらない。車椅子の人が半分以上で避難自体が極めて困難。行政になんとかしてもらうしかない」といいます。

愛媛県の二宮久原子力安全対策課長は「国は『避難計画は自治体の自主性で』というが、要援護者の問題は各自治体共通の悩みで、国として対処すべきだ」と指摘します。

その他、必ず起こるだろう交通渋滞対策、ヨウ素剤配布・服用の進め方が、自治体関係者から共通して課題として出されています。

日本共産党の佐々木泉愛媛県議は「福島の事故の教訓を生かした避難計画づくりが必要だが、一番肝心なのは重大事故での避難を想定しなべてはいけない危険な原発を再稼働させないことだ」と強調しています。
(柴田善太)

 

避難計画 米国では規制対象

原発の再稼働に向けて暴走する安倍政権。原発を「基盤となる重要なベース電源」とし、原発の維持・推進を明確にした「エネルギー基本計画案」を閣議決定しようとしています。

しかし、政府が昨年(2013年)12月にまとめた原発事故時の避難計画の策定は、計画が義務づけられた、原発から30キロ圏内の135自治体のうち6割に当たる82自治体で具体化されていません。

米国では、1979年のスリーマイル島原発事故後、米国原子力規制委員会(NRC)が原子力緊急避難計画を規制の対象にしています。避難計画が実現不可能などの理由で営業運転に入れず廃炉になった原発もあります。

ところが、日本の場合、東京電力福島第1原発事故が起き、避難のあり方が大きな問題になったにもかかわらず、新規制基準は地域の防災計画・避難計画を自治体任せにし、計画の実効性を審査・規制の対象にしていません。エネルギー基本計画案にも「地域防災計画・避難計画の充実化を支援」とあるだけです。

政府のまとめで「具体化が進んでいる」とする原発周辺地域の計画も、原発事故が起きた時、住民の安全や健康を守れるのか、根本的な疑問や課題が山積みです。

再稼働へ向け原子力規制委員会で審査中の原発ではどうか。地域の避難計画をリポートします。(シリーズで掲載)

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