“利益を出せ”の掛け声で架空の利益を計上し、「不正会計」(粉飾決算)の責任を厳しく批判されてきた東芝が、傘下に入れたアメリカの原子炉メーカー「ウェスチングハウス(WH)」の赤字が大きく、決算発表も再三延期したあげく、このままでは上場企業の座を失いかねない事態となっています。東芝は日本の代表的な老舗大企業の一つです。その東芝が粉飾決算で国民・利用者の信頼を失ったあげく、原発でもうけを上げようとして失敗し、経営危機に落ち込んでいるのは重大です。経営者の失敗の責任を労働者や消費者に転嫁すべきではありません。
上場廃止も免れない危険
「不正会計」(粉飾決算)問題が発覚し、東芝が2回にわたって決算発表を延期し、社長以下の役員が交代、パソコンや家電などの事業を縮小して「再建」を図ったのは2015年でした。当時すでに東芝はWHを経営拡大のため支配下に置こうとしており、買収のための巨額の「のれん代」負担やWHの経営見通しに不安があることが、新体制発足を待たず噴出し始めていました。
世界の原子炉メーカーは東芝と手を組んだWH、日立と連携するアメリカのGE(ゼネラルエレクトリック)、三菱電機、ドイツのシーメンスなどが主なメーカーで、東日本で採用されている「沸騰水型」原発を製造する東芝が西日本で採用されている「加圧水型」を製造するWHを吸収して国内外に原発を売り込むことが狙いでした。
東芝は原発を主力に利益を増やすことをもくろみましたが、2011年3月の東京電力福島第1原発の事故後、世界的には原発から撤退の流れが強まっており、シーメンスは原発から撤退、GEも縮小しました。それにもかかわらず原発固執を続けた東芝は、WHが巨額の赤字を抱え込んでいることも見抜けず連携を推進、WHの巨額損失発覚で、今年になり2カ月連続決算発表を延期、証券取引所から「上場廃止」もありうる「監理ポスト」へ入れられています。
WHの巨額損失はアメリカ国内での原発建設費の高騰や福島原発事故後の安全対策費用拡大が原因になったといわれ、総額7000億円とも指摘されますが、全体像は明らかになっていません。東芝は「不正会計」問題で指弾を受けていた時も、一方でWHとの交渉を進めながら、その経営実態は明らかにせず、原発などでもうけは増え続けると宣伝していました。
東芝がようやくWHでの巨額損失を公表したのは昨年末です。世界の流れも、消費者の要求も読み間違え、原発依存を強引に進めてきた経営陣の責任は重大です。
経営責任国民に負わすな
東芝はすでに「不正会計」などが表面化したあと、パソコンや家電などの部門を縮小しており、今後の「立て直し」のためには、WHの株式を売却して別会社に戻すほか、売り上げが増えている半導体部門の売却などが検討に上っています。しかし企業の分割や売却は労働者や関連業者などに大きな負担を負わせることは明らかであり、企業の経営の失敗を労働者や下請け業者などにしわ寄せするというのは全く道理がありません。
東芝の経営者が経営の責任を取るのは当然ですが、労働者や下請けが犠牲にならない措置を政府や自治体も急いで講ずるべきです。
(「しんぶん赤旗」2017年3月17日より転載)