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“対談④”館野 科学的事実が物事動かす/野口 議論ないまま国民負担に

舘野淳さん

原発事故6年 事故費用

 ―原発事故費用が21・5兆円に上ることが明らかになりました。高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)廃炉、東芝の米原発事業での巨額損失などの動きもありました。

  野口邦和・日本大学准教授(放射線防護学)原発事故で国は、廃炉や賠償、除染などの費用が21・5兆円に上ると明らかにしました。従来想定していた11兆円の2倍、国家予算の5分の1相当です。このうち廃炉費用は8兆円といいますが、これで収まるのか疑問です。

 東電負担とされる分は、電気料金に上乗せされて国民が負担。国の負担も、税金です。結局、国民が事故の費用を負担するということです。国民が議論したわけではなく、とても納得できるものではありません。

野口邦和さん

 舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学) 21・5兆円を、どう計算してはじき出したのかわかりませんが、経営者に対しても大きなインパクトを与えていると思います。

 東芝がアメリカの原発事業で巨額損失を出したことからも、原発は「ハイリスク・テクノロジー・」だとはっきりしました。東芝には、原子力事業とは関係ない技術者もいるでしょう。そういう人たちの雇用さえ、どうなるか分からない状況です。

 現在の原子力技術を評価するならば、既存の原発(軽水炉)は欠陥商品だと思います。これまでの原子力開発の〝終わりの始まり″だと思います。

 こうした経済的な問題が出てきた裏には、原発の危険性や放射性廃棄物の処分問題など、科学的な事実があって、経済や政治に反映しているわけです。

廃炉が決まった高速増殖炉「もんじゅ」=福井県敦賀市

 国の政策も、最終的には政治が決めることですが、科学的な事実が物事を動かすという状況が今出てきていると思います。

 野口 1995年にナトリウム漏れ事故を起こし、ほとんど運転されていない「もんじゅ」廃炉を国が正式に決めました。廃炉は当然のことです。しかし、商業化に至る途中の「原型炉」をやめながら、次の段階の「実証炉」をつくる。さらに「核燃料サイクル」は続けるといっています。国には反省がなく、どう考えても理解できない。

 舘野 確かに、「もんじゅ」を廃炉にしただけで済む問題ではありません。ナショナルプロジェクトと称して、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)を設立して、莫大(ばくだい)なお金を投じて「もんじゅ」を造ったものの、うまくいかなかった。責任を追及する必要がある。

 使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で資源量を増やす「核燃料サイクル」という〝夢″は破綻しました。「もんじゅ」をやめて、核燃料サイクル路線をとらないなら、再処理工場(青森県六ヶ所村)もやめるべきです。  (おわり)

 (連載は、唐沢俊治が担当しました)

(「しんぶん」赤旗2017年3月13日より転載)