東京電力が建設を事実上凍結している東通(ひがしどおり)原発1号機(青森県)を資産として扱い、株式配当などに充てる「事業報酬」として年22億円を電気料金に含めていることが1月9日までに、東電への取材で分かりました。
建設中の施設を資産に含めて計算し、電気料金に算入することは認められていますが、東電は完成や稼働の見通しが全く立たない原発の分も含めて契約者に転嫁していたことになります。
福島第1原発事故を受け、東電は業績が大幅に悪化。2012年5月、電気料金の値上げを経済産業省に申請しました。家庭向けは平均で8・46%増と決まり、同年9月に値上げを実施しました。
東電によると、この時の値上げ審査で、建設途中の東通原発を資産として料金原価を計算し、認められました。事業報酬率2・9%を掛けた年22億円か電気料金に含まれています。
値上げから4年が経過し、契約者の負担は88億円を超える計算です。東電は16年3月期まで3期連続で黒字決算となっていますが、料金原価から東通原発の事業報酬を除外する予定はないといいます。
東電の東通原発1号機は、11年1月に本体工事を開始。2ヵ月後に福島第1原発事故が発生し、進捗(しんちょく)率9・7%のまま建設はストップしました。隣接する東北電力東通原発を現地調査した原子力規制委員会の調査団からは、東電の敷地内に活断層が延びているとの指摘も出ました。
東電は取材に対し、東通原発の事業報酬について「事業に必要なコストとして料金に含めることを認められている」としています。建設工事に関しては「立地地域をはじめ、社会の皆さまのご意見、当社の経営状況を踏まえ決定する」と説明した上で、「(10年の)設置許可時点で考慮すべき活断層はないと認められた」と主張しています。
事業報酬 電力会社が保有する資産に一定の利率を掛けて算出し、電気料金の原価に含めます。資産が大きいほど、事業報酬も大きくなります。事業を継続する上で必要な資金調達コストと位置付けられ、借入金の利払いや株式の配当などに充てることを想定しています。現在は2・9%。
(「しんぶん」赤旗2017年1月10日より転載)