経済産業省は東京電力福島第1原発事故の損害賠償や除染、廃炉などの費用が従来想定の11兆円から倍増、22兆円程度と推計しています。電源別の発電コスト分析に詳しい大島堅一・立命館大学教授は、事故費用が22兆円なら、過去1970~2010年度までの原子力発電全体の発電コストが1キロワット時当たり13・2円と試算。「原発は安い」としてきた国と“原子力ムラ”の論理破たんがますます明白となりました。
大島氏によると、同時期の火力発電コストは同9・87円、一般水力発電コストは同3・86円で、原子力が最も高くなります。
経産省が2015年5月に示した試算(2030年モデルプラント試算)は、太陽光(住宅)が12・5~16・4円、太陽光(メガ)12・7~15・6円、風力(陸上)13・6~21・5円でした。再生可能エネルギー分野はこれから伸びる技術で、コストも下がっていく方向。一方、原子力は使用済み核燃料の再処理・処分や廃炉費用はどこまで膨らむかさえわかっていません。
ところが国はいま、福島原発事故費用と原発を持つ電力会社などの原発コストを、「送電線使用料」の上乗せで新電力にも負担を課すなど国民に転嫁する仕組みを急いで構築しようとしており、批判が広がっています。
(「しんぶん赤旗」2016年12月5日より転載)