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“福島に生きる”優しい音色 被災者鼓舞・・トランペット奏者塩田静生さん(60)

街頭で演奏する塩田さん
街頭で演奏する塩田さん

 トランペット奏者の塩田静生(しおた・しずお)さん(60)は、「原発ゼロをめざす須賀川の会」の人たちと福島県須賀川市内の大手スーパー前で月1回第2日曜日に原発ゼロをアピールする活動に取り組んでいます。

 トランペットの果たす役割は大きく、道行く人の足を止めてくれます。

 英雄的でゴージャスな響きは、市民と仲間を鼓舞します。メーデーや大きな集会などでも演奏してきました。

 塩田さんの演奏は、軽快な勇ましさだけでなく、しっとりと優しく語りかけ、なぐさめ、励まし、希望を与える音色で聞き入る人の心をつかみます。

  ■毎日練習続けて

 実家は果樹農家でした。主にナシを栽培していました。長男で、「後を継ぐ」ことになっていました。農業高校に進学。高校の部活で吹奏楽部に所属したことからトランペットを始めました。

 卒業後、農家で生計を支えるのは困難で、市役所に勤めました。

 憲法で「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定されていることに共感。自治体労働者の権利獲得に労働組合の活動に参加しました。

 1974年に創立された郡山吹奏楽団に所属したこともあり、祭りなど各種のイベント、老人ホーム慰問などでも奏でてきました。

  「毎日吹かないと音が出なくなる」と、練習は欠かしません。「やらないと舌が動かなくなります。体力がいる。『50歳でダメかな』と思っていましたが、続けています」

 依頼を受けて隣町の中学校の部活の指導にもあたっています。

 「楽しければいいと考えていますから、決して怒らないことを心がけています。ところが、難しかったのか女の子が泣き出したことがありました。ドキッとしました。教えることは難しい」

 一人ひとりに入門書の楽譜を作ってあげます。自分で吹いて聞かせて、10分間、一人ずつ交代で教えます。「腹式呼吸と息継ぎのコントロールが大切です」

  ■「廃炉しかない」

 「原発ゼロをめざす須賀川の会」の仲間から「芯の強い、熱い気持ちのある人」と信頼されています。トランペットだけでなく、オカリナ、尺八、笛など吹く楽器はどれでも演奏します。

 「音楽は主食ではないけれどもコーヒーみたいなもの。ないと暮らしに潤いが無くなります。平和でないと味わい深くなりません」

 「音楽が好きで離れられない。生活の一部」と言う塩田さん。「原発は人類の生存とエネルギー策とは両立しません。廃炉しかないです。再稼働などありえません」

 きょうも、平和を願う音色が街に響き渡ります。

(菅野尚夫)

(「しんぶん」赤旗2016年11月7日より転載)