日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉が現実味をおびてきました。政府の原子力関係閣僚会議が「廃炉を含め抜本的な見直しを行う」と表明したからです。もんじゅは、原発の使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルの要に位置付けられてきた施設です。しかし政府は、「核燃料サイクルを推進」する方針は堅持するとしています。これほど矛盾した方針はありません。経過と問題をみてみました。 (松沼環)
原子力規制委員会が、原子力機構はもんじゅを安全に運転する資質がないとして▽運転を安全に行える能力をもつものを具体的に示すこと▽見つからない場合は、リスクを明確に減少させるようもんじゅのあり方を抜本的に見直すこと―を文部科学相に勧告したのは昨年の11月でした。
存続を前提に
規制委の勧告を受け、文科省は検討会を設置しますが、その議論はもんじゅの在り方にはふれず、存続を前提にしたものでした。検討会は今年5月、もんじゅの運営主体についての具体的な言及はせずに運営主体に必要な条件を並べた報告書をまとめました。文科省は、これを受けて機構に代わる運営主体探しをしていました。
文科省は、電力会社などの協力を当て込んでいました。しかし、電気事業連合会の勝野哲会長は、電力会社が、原子力機構に代わってもんじゅ運営の受け皿になることには否定的な見解を繰り返し示すなど、運営主体の具体化は難航。
年内に結論も
さらに、運転の前提条件となる新規制基準に適合させるためには多額の改修費がかかります。文科省の試算では運転終了までに5400億円、審査が延びればさらにかかるとされています。このため政府は、「抜本的な見直し」に舵(かじ)を切らざるを得なくなり、年内にもんじゅの取り扱いについて結論を出すとしています。
高速増殖炉の開発は、これまでに技術的問題のほか、経済的な問題などから、米国やドイツなど多くの国が撤退しています。さらに、もんじゅを開発してきた旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の体質も加わり、建設当初から、トラブルや不祥事など問題が繰り返されてきました。遅すぎたとはいえ廃炉が決断されるべきです。
しかし、政府は見直しの理由に「情勢の変化」を挙げており、これまでの科学的根拠を欠いた無謀なもんじゅ開発の姿勢をなんら反省していません。「高速炉開発会議」が新たに策定する高速炉開発方針案も、もんじゅ計画の二の舞いになりかねません。(つづく)
(「しんぶん」赤旗2016年10月28日より転載)