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偽装再建 東電新事業計画④・・破綻させ原発ゼロに

東電には、すでに国から1200億円(補償金)、原子力損害賠償支援機構から約3・5兆円が投入され、さらに膨らもうとしています。国は、汚染水対策の遮水壁や中間貯蔵施設の建設費用も肩代わりしようとしています。

ところが、東電はいまも「競争に背を向けた電力公社化は、責任遂行にかえって大きな支障が生じる」(事業計画)と主張し、公的管理体制からの早期脱却をめざしています。

大阪市立大学大学院の除本理史(よけもと・まさふみ)教授は、湯水のように公的資金を投じなければ賠償や除染費用も出せず、事実上の経営破綻という東電の実態をあげ。「原発事故を起こして債務超過になったら、法的整理をするのが本来の責任の取り方だ」と語ります。

二つの大前提

除本氏は、賠償や除染費用すべてを東電に求める原子力損害賠償支援機構法の枠組みが行き詰まっている以上、国費投入が必要な場合もあると指摘。そのためには二つの前提が不可欠だといいます。

一つ目は、経営者や株主、債権者に負担を求める東電の法的整理です。二つ目は、国が福島原発事故被害についての責任を認め、それに基づく財政支出だということを明確にすることです。

除本氏は、国の指針や東電の事業計画は、この二つの前提と正反対の方向に進んでいると批判します。

「国は、東電の賠償責任を軽減するために国費を投入しようとする一方、東電と並んで国も加害責任を認め、これまでの原発政策を反省するのかというと、そうは言わない。東電の資金繰りを助けることで、法的整理を回避している」

政府が閣議決定を目指すエネルギー基本計画案は、原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけ、原発の新増設にも含みを残しています。

東電の事業計画も、「原子力はエネルギー政策の根幹」と明記し、柏崎刈羽原発の安全確保のために今後1500億円を追加投資するとしています。巨額の追加投資を進めれば、資金回収を口実とした再稼働圧力がさらに高まります。

加害者を救済

福島原発事故の教訓を風化させ、原発に回帰する安倍政権と東電。除本氏は、加害者としての自覚が東電に欠如している根底には、原子力損害賠償法が原子力事業者の賠償責任を「無過失責任」としていることがあると指摘します。

無過失責任とは、福島原発事故について東電に故意や過失がなかったとしても、損害賠償の責任を負わなければならないというものです。被害者にとっては、東電の過失責任を立証する必要がなくなる〝利点〟がある半面、東電は故意・過失を正面から問われることがなくなり加害者意識が希薄になります。

「東電は過失を問われないので、とりあえず賠償金を払っておけばいいという対応になっている。しかも、そのために必要な資金は原子力損害賠償支援機構(原賠機構)から交付される。それを返すために原賠機構に支払う一般負担金は、電気料金に上乗せできる。加害者救済の仕組みだ」(除本氏)

いま全国で、東電と国の責任をあいまいにする賠償システムを問い直す運動が広がっています。東電を破綻処理し原発ゼロの日本に向かうのか、救済して原発回帰に進むのか。巨大電力企業の命運が、日本の転換点になろうとしています。

(おわり)

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