原子力規制委員会は4月20日、40年を超える運転延長を申請している関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)が新規制基準に適合しているとする審査書を了承し、設置変更申請を許可しました。規制委が、40年を超える運転延長を申請している原発の設置変更を許可するのは初めて。原発は運転期間が長くなればなるほど壊れやすくなるため、市民団体などから「認可すべきではない」との声が上がっています。
東京電力福島第1原発事故を受けて改定された原子炉等規制法では、原発の運転期間は原則40年としながら、規制委の認可を受ければ最長で20年の延長ができるとしています。
すでに運転開始から40年を超えている高浜1、2号機の再稼働には、関電は7月7日までに設備の詳細な使用などを決める工事計画と運転延長の認可を受ける必要があります。
関電は1、2号機を新規制基準に対応させるために、耐震補強のほかに原子炉建屋上部に新たに遮蔽(しゃへい)を目的としたドームを設置するなど約2160億円をかけるといいます。関電は再稼働の見通しについて2019年10月ごろとしています。
規制委は、原子炉内の構造物の耐震評価に必要な実験を、期限を限られた設置変更や工事計画の審査ではなく、使用前検査で確認することにしました。
規制委は、今年2月から一般からの意見募集を実施し、606件の意見が寄せられました。高浜1、2号機が40年を超えて運転することに反対する意見をはじめ、高浜原発4号機でトラブルが発生したことなどを指摘し、関電の「技術的能力」が信頼できないなどの指摘がありました。
高浜原発1、2号機をめぐっては、福井県の住民らが14日、国を相手取り運転延長認可の差し止めを求め、名古屋地裁に提訴しました。
解説
老朽原発、実証試験は先送り
老朽原発は劣化だけでなく、技術や設計の古さも問題です。東京電力福島第1原発事故で、最初に炉心溶融し、水素爆発を起こした1号機は運転開始から40年を迎えようとしていた矢先の事故でした。
設置変更許可が出た関西電力高浜1号機は1974年11月、同2号機は75年11月に運転を開始しました。日本で、原発の耐震設計審査指針が最初に定められたのは78年。高浜1、2号機はそれ以前の設計です。今回、関電が想定した最大の地震動(基準地震動)は700ガルと引き上げられましたが、これに本当に耐えられるのか疑問です。
今回の設置変更許可は、手続き的にも問題があります。原子炉等規制法では、原子炉の運転延長の認可は、1回だけ40年を超えない日までとなっており、それまでに認可が得られなければ実質的に廃炉となります。
高浜原発1、2号機は、施行に伴う猶予期間のため期限は7月7日。運転延長認可には、新規制基準に適合を確認し、設置変更許可と工事計画認可を受けていることが条件となります。
今回の設置変更許可では、高浜原発1、2号機は、新規制基準で求められている難燃ケーブルではないことから、関電は防火シートでケーブルを巻くなどして、難燃ケーブルと同等の性能となると主張。この性能は実証試験で確認するとしていますが、試験結果の確認はこれからです。
また、耐震性に関する審査でも、蒸気発生器など原子炉内構造物の評価が従来の手法では許容値を超えてしまうことから、関電は異なる手法で評価を実施しました。規制委は、試験を実施し、手法の妥当性を確認するとしてこれを認めました。
規制委は、期限のある工事計画の審査では、関電の手法を前提に耐震性を確認したといいます。しかし、試験が行われるのは耐震補強工事の終了後、内容の確認は期限のない使用前検査の中でよいとしています。実証試験の先送りは、期限内に許認可を通すための対応といえます。
(松沼環)
(「しんぶん赤旗」2016年4月21日より転載)