東京電力福島第1原発の建屋周囲の井戸(サブドレン)などから汚染地下水をくみ上げて処理した後、海に排出する「サブドレン計画」。排水に含まれる放射性物質のうち、トリチウム(3重水素)濃度が1月中旬以降高まり、排出基準値である1リットル当たり1500ベクレルに近づきつつあります。この状態が続けば、排水量が制約され、建屋への汚染水移送量の増加につながる可能性もあります。計画がジレンマを抱えています。 (唐沢俊治)
東電は昨年秋、汚染水対策として造った「海側遮水壁」を閉合し、サブドレン計画をスタートさせました。サブドレンの地下水は処理して排水。一方、護岸の井戸(地下水ドレン)は当初、くみ上げた地下水のほとんどを、高濃度汚染水がたまっている建屋に移送していました。東電は「放射性物質の濃度が高すぎて、サブドレンシステムに入れることができなかった」といいます。
その後、汚染水タンクがひっ迫しているもとで、今年1月7日から、地下水ドレンの水を処理して排水するため、集水タンクへの移送を開始しました。
この計画のネックとなっているのが、処理装置で取り除けないトリチウムです。当初排水していたのは1リットル当たり200~300ベクレル程度だったのが、地下水ドレンの高濃度の水が混ざったため、3月中旬には、同1000ベクレルに近い値で推移しています。(グラフ)
東電は、地下水ドレンからくみ上げた地下水はもともと浄化して排水する計画だと指摘。「建屋への移送というイレギュラーな対応が続いたが、これが当たり前ではなく、集水タンクに入れて排水するのが、あるべき姿。本来の運用に戻している」と説明しています。
排水は同1500ベクレル以内で管理すると漁業者ら地元と約束しているため、東電は「基準は必ず守りたい。超えるようであれば移送しない」と強調しています。
基準超えが懸念され集水タンクに移送できないような状況になれば、くみ上げた汚染地下水は建屋に移送せざるをえません。サブドレン計画の現状は、低濃度で海へ排水することと汚染水の増加抑制との両立の困難さを浮き彫りにしています。
(「しんぶん赤旗」2016年4月6日より転載)