安倍晋三政権が、CO2(二酸化炭素)など温室効果ガスの排出量を2030年までに13年比で26%削減する、地球温暖化対策の計画案を了承しました。国際的な枠組みである「パリ協定」に日本が提出した「約束草案」にもとづくもので、国民の意見を公募したうえ、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)までに閣議決定する予定です。安倍政権の地球温暖化対策は目標が低すぎるうえ、石炭火力への依存を続け、原発にも頼った問題の多いものです。温室効果ガス削減の国際的責任を果たさせるとともに、原発固執をやめさせることが重要です。
目標自体低すぎるうえに
昨年(2015年)12月、国連気候変動枠組み条約の21回目の締約国会議(COP21)で決まった「パリ協定」は、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べ2度未満に抑えるため、人間活動が原因となった温室効果ガスの排出を今世紀末までに「実質ゼロ」にすることなどを盛り込みました。世界のほぼすべての国が参加する、温室効果ガス削減の画期的な国際的枠組みです。
日本は各国より大幅に遅れ、温室効果ガス削減の「約束草案」を提出しました。30年までに13年比で26%削減するという日本の目標は、これまで国際的な枠組みだった京都議定書が基準とする1990年に比べ18%の削減にしかなりません。日本と同じ排出大国のアメリカや欧州連合に比べても見劣りします。「パリ協定」は5年ごとの目標見直しを義務づけており、日本の対応が問われています。
安倍政権が3月15日の地球温暖化対策推進本部で了承した計画案は、その不十分な「約束草案」を前提に、イノベーション(技術開発)や「省エネ」のための国民運動に取り組むことなどを決めたものです。計画案には50年までに80%削減の目標も盛り込まれていますが、その実現も危うい限りです。
計画案はCO2の排出量が多い石炭火力について、発電効率が低いものはつくらせないなどとしていますが、もともと安倍政権が決めたエネルギー基本計画は、30年度でも電源の26%程度を石炭火力で賄う計画です。効率を高めても石炭火力への依存を続けていては、削減の国際的責任は果たせません。
地球温暖化対策計画案が「安全性が確認された原子力発電の活用」を柱に掲げ、原発再稼働を推進していることは重大です。安倍政権のエネルギー基本計画は、30年度の電源の22~20%程度を原発に依存しています。安倍政権がエネルギー基本計画を達成しようとすれば、現在停止中の原発の再稼働だけでは足りず、運転開始から40年を過ぎた老朽原発の運転延長や、原発の建て替え、新設まで必要になります。事故の危険が高い原発を日本中に林立させる計画を国民は決して求めていません。
原発でも温暖化でもなく
東京電力福島第1原発の重大事故の後、各地の原発が停止し、2年あまりも「稼働原発ゼロ」の事態になっていても、電力は賄え、温室効果ガスの排出もすべての原発が止まっていた14年度は前年度に比べ全体で3・0%減りました。国民が省エネや風力、太陽光など再生可能エネルギーの利用拡大に取り組んだからです。
原発依存も温暖化も国民は望んでいません。原発固執からの脱却は急務であり、実現は可能です。
(「しんぶん赤旗」2016年3月21日より転載)