「これから先どうなるのか。夜も心配で眠れない」。宮城県石巻市の仮設住宅で暮らす女性(66)は、憔悴(しょうすい)しきった表情で訴えました。ついの住まいにと待ち望んでいた災害公営住宅に入居資格がないと市から判定されたというのです。
東日本大震災から5年。被災地では、災害公営住宅建設の遅れなどで、仮設住宅から出られない人が6万人近くいます。さらに次の住まいに移る展望のないという事態まで相次いでいるのです。
今回で8回目となる本紙の「被災者300人実態調査」は、回を重ねるごとに状況が深刻化していることを痛感させます。とくに今回は、住まい、健康、仕事・生業(なりわい)などあらゆる問題が昨年と比較してもさらに悪化。生活の基盤である家計・収入状況を7割もの人が苦しいと答えています。
「安倍首相は、口では復興をいうが、被災者にあまりにも冷たい」。取材先でたびたびぶつけられる怒りです。被災者の置かれているのは、まさに憲法25条が保障する生存権が脅かされ踏みにじられた事態です。
しかし、被災者は決してあきらめていません。東京電力福島第1原発事故の被害者たちは国と東電に賠償などを求めて裁判闘争に立ち上がり、2月には原発被害者訴訟原告団全国連絡会が結成されました。
住まいの問題でも「住まい難民を出さない」というスローガンのもと被災者と市民のたたかいが広がっています。こうした運動を支える日本共産党に「震災直後から一番力になってくれている」という声が取材先で寄せられています。
「被災者に心を寄せる」。私たちはこの言葉を震災報道の原点としてきました。いま、あらためて決意を固めます。被災地の現状と思いを伝え、冷たい安倍政治を告発する。そのための取材と記事に全力をあげることを。
(東日本大震災取材班キャップ・森近茂樹)
(「しんぶん赤旗」2016年3月12日より転載)