温暖化を引き起こすCO2を大量に排出する石炭火力発電所の増設を環境省が容認するなか、日本の巨大銀行や大手生命保険会社が4兆円を超える投融資を国内石炭火力の増設を計画する企業に行っていることが3月2日までに明らかになりました。 (桑野白馬)
環境団体「350・org」は化石燃料や原発関連企業への日本の投融資に関する調査結果を発表しました。銀行や保険会社、年金基金、自治体などの資産運用を有価証券報告書などから試算しています。
それによると、みずほ銀行が約1兆2000億円、三井住友銀行が約1兆円、三菱UFJ銀行が約8300億円を国内石炭増設関連企業に投融資。保険会社では、日本生命が約8500億円、明治安田生命が約2800億円を同関連企業に投融資しています。(表↓)
パリ協定に逆行
CO2の排出量が多い石炭火力発電所の増設は、昨年COP21で合意した「パリ協定」で示された「脱炭素化」の世界の流れに逆行するものです。
調査に協力した「環境・持続社会」研究センターの田辺有輝さんは、こうした日本の銀行の動きに比べ、「欧米の金融機関では、化石燃料関連企業への投融資から撤退する動きが強まっている」と指摘します。
その理由として、「化石燃料関連企業が資産として持っている石炭や石油を全て燃やすと、(パリ協定で決まった)“世界の気温上昇を2度未満に抑える目標”を達成できません」といいます。
今後規制が厳しくなればこの資産は、使えない「座礁資産」化する可能性があるため、金融機関などは化石燃料関連への投融資をリスクと見るようになりました。
日本政府の責任
金融機関以外でも、ノルウェー政府の年金基金が化石燃料から多くの収益を得ている企業からの投資を撤退していると紹介。田辺さんは「日本では一部商社などが化石燃料関連への投資を削減する動きを見せるものの、総じて動きが鈍い」として、「この路線を変えるためには政府が削減に向けた方針を示すことが大切」と強調しました。
「350・org」の古野真さんは、今回の調査結果を「世界が低炭素社会に向かうなか、日本の状況は残念」とし、「今後は石炭関連への投融資方針を掲げていない銀行への預金を呼びかけるなど、日本でもダイベストメント(投資撤退)運動を広げていきたい」と語りました。
みずほ銀行の広報担当者は「環境面に配慮した対応を行っています」と話しています。
国内石炭増設関連企業 関西電力、J―POWER、東京電力、中部電力、九州電力、中国電力、神戸製鋼所、東京ガス、丸紅、出光興産の10社のこと。
(「しんぶん赤旗」2016年3月3日より転載)